人材マネジメント考vol.3_人的資本経営における人材採用プロセスの見直しの必要性

2023.10.05

 

イントロダクション

以前コラムでご紹介した「人的資本経営を意識した人材マネジメントの重要性 」では、人的資本の考え方が企業の人材マネジメント戦略全体へ及ぼす影響とその対応策について考察しました。

ここから、人材マネジメント戦略の中の採用、育成・研修、評価・報酬・配置の各視点に対して、人的資本という考え方でそれぞれの現状を分析した場合、今後どのような修正が求められるのかを考察していきたいと思います。本コラムは、採用についてです。 

中途採用比率の上昇

採用については、昨今従来の新卒一括のスペック均一採用から事業部門別のスペック別採用や外国籍社員の採用等、企業の人材採用における多様化・高度化に伴い、中途採用比率が向上しています。(参照図1:doda転職求人倍率レポート(2023年5月)

 

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新卒一括採用の比率は相対的に減少しているものの、組織の活性化、定年退職者の補充、年齢などの人員構成の適正化等の目的で今後も主要な労働力の調達手段として存続するものと思われます。
採用対象者を中途採用と新卒一括採用の2つのカテゴリーに大分類し、人的資本の考え方に照らし合わせて現状を検証してみたいと思います。

採用における人的資本の考え方

中途採用については、新規事業やグローバル戦略の実現等、対象の職務要件に基づいたスペック別の採用基準がある程度明確になっており、採用時点で要件を100%満たす人材を採用することは無理だとしても、ある程度FIT&GAPを可視化して、入社後に職務要件の不足分を投資によって補うことを前提に採用可否判断をしているものと考えられます。
一方新卒者については、外資系や一部の日本企業で職種別採用が取り入れられてはいるものの、多くの日本企業では、入社直後の職務遂行能力がないことを前提に、採用の可否判断をしているものと思われます。前回のコラムの確認にもなりますが、人的資本とは、人の知識や能力等を「資本」とみなし、人的資本への投資は、個人が持つ知識・スキル・能力・資質等を可視化して引き出す、また新たな業務遂行に必要な知識やスキル等を習得することで、結果として生産性の向上や組織の成長につなげることを目的としているということでした。

新卒採用における人的資本とは何か

では、この新卒一括採用の場面で資本とみなすべき人の知識や能力等を企業の採用側としてどのように捉えるべきなのでしょうか?

 

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マイナビが2022年2月1日~2月14日に企業の担当者に実施した2023年卒企業新卒採用予定調査によると、新卒採用で最重要視している項目として、自社の職務への適性を一番重視していることがわかります。ここでの職務の適性が高いとは、一般的に新卒者には現状職務遂行能力がないことを前提にすれば、入社後の職務遂行に必要な要件を獲得するための可能性や将来性をどれだけ持ち合わせているかを意味していると思われます。要は任された業務をスムーズに遂行出来るようになるために必要な知識、スキル、技術等をどれだけ速く習得してパフォーマンスを発揮出来るか、その獲得のために必要な基礎能力、知識、モチベーション、資質(性格特性、行動特性等)等をどれだけ持ち合わせているか、これらに投資することで将来的に成長が期待出来る価値のある人材かどうかを採用の判断基準にしていることになります。

成長可能性の見極め

既に多くの企業では、外部の基礎能力検査や適性検査、面接やグループワークショップ等の方法を通じて、このようなポテンシャルがあるかどうかの可否判断をしていると思われます。しかし、その手法の多くは性格検査や能力検査、短時間の個人面談やグループのワークショップ等であり、実際の業務遂行において、必要なスキルを習得していくポテンシャルがあるかどうかの見極めるための情報量が不足しているのも事実です。求める職務要件に基づいて、現状のスキルレベルや業務経験実績に基づいて採用可否を判断する中途採用者とは異なり、未経験者の新卒では、これから成長の可能性があるかどうかがその見極めの判断基準となります。この成長の可能性にはどのような要件が必要なのでしょうか。

新卒採用における判断基準の見直し

経産省 人的資本経営の実現に向けた検討会報告書(人材版伊藤レポート2.0)」にも示されていたように、人的資本経営において、①人的資本経営における人材戦略と経営戦略の連鎖 ②目指すべきビジネスモデルや経営戦略と現時点での人材や人材戦略との間のギャップ把握の2点は極めて重要な要素です。入社後の成長の可能性(職務遂行に必要な能力開発のための継続学習意欲があるかどうか)についてのギャップを少なくさせるためにも、新卒採用者に秘められたマインド、能力、資質等、何をどのレベルまで求めるのか、その判断基準を再度見直してみる必要があるのではないでしょうか。


今後のビジネス環境において、人材マネジメントの重要性は増しています。企業は、変化する事業構造に対応し、人材育成・研修の重要性を理解し、戦略的な人材マネジメントを実践することが不可欠です。
弊社では法人向けグローバルリーダー育成研修サービスを提供しており、グローバルビジネスに必要なスキル・能力を可視化し、現状からゴールに至る最適なソリューションをお客様とともに作り上げております。

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