【英語研究の第一人者が推奨!】英語学習におけるChatGPT活用法

2023.06.30

 

最近、英語学習でも生成AIがにわかに話題になっていますね。
たとえばChatGPTは英語学習にどんな影響があるのか、よい活用方法がないかなど気になっている方も多いと思います。

そこで、この度、日本の英語研究の第一人者でNHK英語講座などでもおなじみの東京外国語大学の投野 由紀夫先生にお話を伺ってみました。


プロフィール:投野 由紀夫教授

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東京外国語大学ワールド・ランゲージ・センター長
大学院総合国際学研究院 教授

英国ランカスター大学でPh.D.(コーパス言語学)を取得。専門はコーパス言語学を応用した英語教育、英語辞書学、外国語教育学など。

 NHKの「100語でスタート!英会話」」(2003-2005年度)、「コーパス100! で英会話」(2009年度)、NHKラジオ・テレビ「基礎英語」(2016-2020年度)の講師を歴任。

現在はEテレ「英会話フィーリングリッシュ」の講師を務めている。

日本の英語教育の改革に関して、「CEFR-J」という新しい英語の汎用枠の構築プロジェクトを牽引している。

 

日常会話はNG? でも…

いま話題のChatGPTを皆さんは使っていますか。
あらゆる分野の知識を豊富にもっていて、対話型で丁寧に応答してくれ、英語も日本語もその質の高さは驚嘆すべきレベルです。これを英語学習に使わない手はありません。ここではビジネスパーソンの英語学習にChatGPTをどう使えばいいか、私が考える効果的な活用法の一部を紹介します。

まず、"Chat"というくらいだから気軽に普通の会話をしてみようとしますが、実はこれがあまりうまくいきません。
たとえば「今日も1日疲れたなぁ」という感じで話しかけてみますと…

こんな感じで、圧倒的にプロダクティブな返事(笑)
ご自分で英語がわかればいろいろ質問してみて、答えを英語でたくさん読むという練習にはなりますが、自然なネイティブとのやりとりが一見無理かな、と思ってしまいますね。

20230630_column_1OpenAI社のChatGPT画面から転載

ChatGPTの回答をチューニングする方法

ただChatGPTはプロンプト次第で自分の求める回答にうまく誘導してあげることで、ある程度答えをチューニングできます。この際、いくつか重要なポイントがあります。

会話の目的を明確に伝えること:
たとえば、これからする会話は英語学習のためで入門・初級レベルである:
This chat aims to teach basic English conversation to learners whose English language levels are novice to pre-intermediate.

AIの役割を明示すること:
You act as an instructor and start the conversation, please.
これを “act as” hack といいます。ChatGPTは役割を明確に示してあげることで、話し方や回答の仕方を最適化するわけです。

このような目的や条件を教えてあげるだけで、ChatGPTは教師のように振る舞い始めます。

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OpenAI社のChatGPT画面から転載

 

こういうモードで教師のように問題を出してくれるようになり、さっきよりずっと初級会話を練習しがいのある対話ができるようになりました。

 
プロンプトを駆使した応用編

ただ、これではずっと1問1問、先生が練習問題を出しているような会話ですね。そこで、AIのロールを変更してみましょう。
プロンプトに以下のような指示をします。

 

Sorry to interrupt, but I want to continue the conversation rather than you asking

me a new question every time. Can you play the role of a cashier at a hamburger

shop and keep talking with me?

 

ここでは、先生として質問する、というモードではなく、ハンバーガーショップのレジの店員として注文をとるというロールに変えます。

 

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そうすると…

 

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OpenAI社のChatGPT画面から転載

 

今度は、少し饒舌な店員になって購入するべきバーガーやトッピング、「一緒にフレンチフライや飲み物はどうですか」といったことを喋ってくれるようになりました。これならば、ほとんど疑似インタラクションができるレベルまでになりましたね。

こういった感じで、ChatGPT に①会話の目的、②AIのロール、③ 会話を具体的にどういう風に続けたいか、といった指示を明確に教えてあげるだけで、かなり柔軟に話し方を変えてくれるのです。この一手間を加えるだけで、ネイティブの先生とチャットしているようなレベルに近い感じで、ストレスなく英語を使えるモードを提供してくれます。
何よりも、間違えてもある程度意図を汲んで、会話を成立させてくれるし、決して嫌みや批判はしないので、気持ちよく会話を続けられます。
ぜひ、必要と思われる分野の目的・場面・状況を教えてあげて、自分専用の会話練習AIとしてカスタマイズしてみてください。

英語面接対策にも役立つ上級編

インタビューの練習台としてこれを進化させたのが、ジョブインタビューなどの練習台としてChatGPTを使う方法です。
たとえば、こんな風にプロンプトを書きます。

 

I want you to act as an interviewer. I will be the candidate and you will ask me the

interview questions for the manager position.

I want you to only reply as the interviewer. Do not write all the conservation at once. I want you to only do the interview with me. Ask me the questions and wait for my answers. Do not write explanations.

Ask me the questions one by one like an interviewer does and wait for my answers. My first sentence is “Hi.”
(Brown, 2023, ChatGPT Prompts Mastering, Contributed by: @f & @iltekin

Examples: Node.js Backend, React Frontend Developer, Full Stack Developer,

iOS Developer etc.)

 

すると、ChatGPT はいきなりインタビューロールに徹します。

 

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OpenAI社のChatGPT画面から転載

 

こうなれば、もうほとんどその場でマネージャーの経験を面接で話すモードとほとんど同じになります。プロンプトで以下のような制限を明確にしていることが大事です。

 

私にだけインタビューをしてもらいます
:I want you to only do the interview with me.
質問をしたら、私の答えを待ちます
:Ask me the questions and wait for my answers.
説明は書かなくてよいです
:Do not write explanations.
インタビューなので、いっぺんにではなくて1つずつ質問して、私の答えを待ってください
:Ask me the questions one by one like an interviewer does and wait for my

answers.

 

最初に私が書いていたものよりも、もっと具体的で ChatGPT がどう反応するか、を熟知したプロンプトの出し方です。
これがいわゆる Prompt engineering (プロンプトエンジニアリング)と言われるもので、このプロが年収何千万円も稼ぐように海外ではなってきているそうです。

英会話への応用もおそらく、このプロンプトの作り方が大きく影響しているはずです。皆さんも、英会話そのものが上達すると同時に、効果的な英語学習のためのプロンプトの出し方を研究したら、きっとものすごくインパクトのある教材を ChatGPT で作れるかもしれません。


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