【海外赴任は事前準備が成否を分ける~海外赴任前研修の3つのポイント】

2022.01.25

 

みなさんは、海外赴任者向けに「海外赴任前研修」を実施されていますか?

「英語力は現地に行けばどうにかなる」

「英語は一定量話せるので問題ないと思っている」

「実施しているが、現状の研修が正しいのかわからない」

といった方も多いのではないでしょうか。

海外赴任は事前にどれだけ準備できているかで、現地でのパフォーマンスの成否を分けるといっても過言ではありません。ぜひこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。

 

本記事では海外赴任前研修のおさえておくべき3つのポイント、そして海外赴任前研修の事例をご紹介させていただきます。

 



 

 

現状の英語スピーキング力を把握し適切な目標設定

置くべき指標は一つとは限らない!アウトプット力の可視化には"CEFR"、"CEFR-J"

 

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日本ではTOEIC®L&Rが英語力を測る代表的な指標として採用されています。TOEIC®L&Rは「情報収集」する上で必要な能力を測定するためには非常に優秀なテストです。一方で、

ミーティングで発言する能力、プレゼン能力、交渉能力など「アウトプット」の能力測定については少し足りない点があると考えております。故にTOEIC®L&Rのスコアと英語スピーキング力に乖離が生じるといったことは皆さまも一度は経験があるのではないでしょうか。

 

そこで英語スピーキング力を測定する際におすすめしたい指標がCEFRです

CEFRとはCommon European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment(日本語訳:ヨーロッパ言語共通参照枠)の略で、ヨーロッパで、「外国語学習者の習得状況・言語運用能力」を示す共通の基準として設けられた指標です。英語知識の量ではなく、その言語で何ができるかをCANDOで示した指標となります。

              ▼CEFRで定義される6段階レベル
               詳細はこちらをご覧ください


海外で仕事を行う上で必要な英語スピーキングレベルはB1high

日本国内でこのCEFRの影響に早くから目を付けて、英語教育の分野でCEFRの適用を進めたのが CEFR-J です。これはCEFRに完全に準拠し、かつA1~B2までをよりスモールステップに細分化、さらにA1.1の前に Pre-A1 をつけて導入部分を緩やかなスロープにした、日本の英語教育に特化した枠組です。(※下部図1参照)目標設定時はCEFR-Jを活用すると良いでしょう。


また海外で仕事を行うために目指すべきレベルはB1highと言われています。

では、B1highとはどの程度のスピーキングレベルなのでしょうか?
以下スピーキングレベルサンプル動画(A2~B2:レアジョブレベル4~8)をご確認ください。

▼スピーキングレベルサンプル動画(所要時間2分36秒)

 

 

※当社が提供するレアジョブ英会話は、英語スピーキング力をCEFR-Jに準拠した10段階にレベルに分けております。(相関図は下記図1参照)B2レベルはレアジョブレベルでレベル8に値します。

           ▼図1:CEFR-Jとレアジョブレベルの相関図

 

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各レベルでできること:

 ■A2(レアジョブレベル4)

・補助となるツール(物・写真・データ等)を指さしながらであれば、基本的な情報を伝え

 それに関する簡単な意見交換ができる。

・一連の基礎的な語彙やフレーズを使って、自分の仕事や家族・趣味に触れながら

 職場や会食等で自己紹介ができる。

 

■A2high(レアジョブレベル5)

・予測できる慣れ親しんだ相手との日常的な状況(職場での挨拶・質疑応答など)であれば、

 いくつかの語彙やフレーズパターンを使ってやりとりができる。

・一連の基礎的な語彙やフレーズパターンを使って、会議で意見や行動計画について

 理由を挙げて短く述べることができる。

 

■B1(レアジョブレベル6)

・自分の仕事に関わる内容について、基礎的な語彙やフレーズを幅広く使って意見を述べ、

 情報を交換することができる。

・自分の考えを事前に用意して、メモ等の助けがあれば、聞き手を混乱させないように

 自分の仕事に関連するトピックについて順序立ててある程度詳しく語ることができる。

 

■B1high(レアジョブレベル7)★海外赴任者が目指すべきレベル

・仕事上で想定される問題を、自信を持って詳しく説明し、相手が協力的であれば

 丁寧に対応依頼して解決することができる。

・自分の仕事に一部でも関連している、関心事であれば状況について自分の意見を加えて

 ある程度流暢に発表し、聴衆からの質問にもわかりやすく答えられる。

 

■B2 (レアジョブレベル8)

・ネイティブ同士の議論には加われないこともあるが、自分が一部でも興味関心があること 

 なら抽象的なトピックでも議論することができる。

・ある視点から賛成または反対の理由や代替案を提示しながらプレゼンテーションを
 流暢に行い一連の質問にも論拠を述べて明確に回答することができる。

 

 

英語スピーキング力に合わせた研修設計

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海外赴任までの限られた時間を活用して効果的に英語スピーキング力を習得してくためには、レベルに合った適切な研修設計が重要です。

初・中級者おすすめ学習法(Pre-A1~A2High:レアジョブレベル1~5)

「初級者なのでスピーキング強化はまだ早い、まずは語彙力・文法などのインプットから」

考える方も多いのではないでしょうか。実はこれはあまりおすすめできません。
日本の教育はインプット寄りの授業が中心で、中学・高校までの英語学習時間は約1,500時間、大学までであれば約1,800時間の学習のインプット学習を既に実施しており、最低限の知識は身についています。不足しているのは練習の場、アウトプットする場です。

なので最初の1、2ヶ月間は大量に英語を発話することを最優先に考え、アウトプット量を増やしていきましょう。また学習時のテーマ、教材はビジネスシーンに特化した題材を選択しましょう。「ビジネス英会話=上級者」とイメージする方もいるかもしれません。ですが、社内ミーティング、商談、電話対応といったような対策すべきシーンが限られているため、習得やすい傾向があります。実際に会話に必要とされる単語数も日常英会話の場合は3,000~4,000単語、ビジネス英会話は約1,500単語がしっかり身についていれば十分コミュニケーションが取れます。

中級者以上向けおすすめ学習法(B1以上:レアジョブレベル6以上)

A2High(レアジョブレベル5)までのレベルアップは発話量に注力して学習継続すればそこまで難易度は高くないでしょう。しかしB1以上(レアジョブレベル6以上)を目指すためには発話量に加えて、学習の質にも注力する必要があります。

例えば、オンライン英会話と並行して定期的にネイティブ講師とのレッスンや、実務に即した専用カリキュラムでのレッスンを受けることにより学習の質が向上します。ネイティブ講師とのレッスンはネイティブの言い回しやニュアンスなど、ネイティブ講師からしか学べないことがあるため効果的です。

 

また雑談力(スモールトーク)も赴任後には欠かせない力です。

一定のビジネス英語・専門用語を押さえれば商談や社内でのコミュニケーションは大きなトラブルはなく進むでしょう。ただ商談開始前のアイスブレイク、同僚とのランチ、また取引先との会食などは信頼感を構築するための大切な要素です。

単に「雑談力」といっても、会話の幅を広げる・長い文章を作る・相手の言っていることを正しく理解し正しい表現で回答する、といった力を強化する必要があります。練習方法としては、

一問一答形式で即座に回答し、沈黙せずできる限り言葉を発するように心がけるとよいでしょう。

▼例:
レアジョブ英会話:スモールトーク教材

https://www.rarejob.com/lesson/material/conversation_questions_beginner/

 

 

 

英語スピーキングだけではない!赴任前に準備しておくべき力

異文化理解力

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「なんでそんな言い方するの?」

「この仕事を依頼したつもりだったのに…」

文化の違いから考え方・働き方などが異なり、様々な問題が生じてしまうこともあります。

相手との違いを理解してスムーズに業務に取り組めるように準備をしておくことも必要となります。では、文化の違いとはどのようなことが挙げられるでしょうか。

比較的見えやすい=「伝わりやすい文化の違い」もあれば、すぐにその場では見えにくい=「伝わりにくい文化の違い」も存在します。
以下、例を記載いたしましたのでご参考にしてください。

伝わりやすい文化の違い(例) 伝わりにくい文化の違い(例)
  • 挨拶
    日本:お辞儀
    他国:握手、ハグ等


  • 上司/部下の関係性
    日本:ヒエラルキーの差を不平等に演出する文化
    他国:ヒエラルキーの差を平等に演出する文化
  • 生活文化
    日本:家に入る時は必ず靴を脱ぐ
    他国:家の中でも靴を履いて生活する

  • 社会関係
    日本:集団主義が強い
    他国:個人主義が強い

  • 食事
    日本:お茶碗を手で持って食べる
    他国:お茶碗を手で持つことは行儀が悪いと判断

  • 職務範囲の捉え方
    日本:自身の担当外でも柔軟に対応して助け合う傾向がある
    他国:自身に割り当てられた業務だけが範囲内でそれ以外は範疇外という考え方

赴任してから、異文化を理解するのは大きなストレスになります。

事前に「違って当然である」ことをマインドセット、国の文化を理解し異なった考え方を持った相手にどのようにアプローチしていくべきか実際のビジネスシチュエーションで起こりうる様々な場面を想定し対応できるように準備をしておきましょう。

 

ビジネスマナー 

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全世界の共通言語は英語ですが、全世界共通のマナーは存在しません。日本では良いとされているマナーでも他国では悪いとされるということも往々にあります。

マナーとは「民族」「宗教」「歴史」…様々な要素が関連しあって出来上がっています。

それらを理解したうえで「相手を不快にしない行動をする」ことが非常に重要になります。

日本には基本的には存在しませんが、多くの国では絶対にやってはいけない「タブー」が存在します。例えばエリアによって違いはございますが下記のようなことが例にあげられます。

・中国:戦争中の話題、政治の問題、台湾のことを「中華民国」と呼ぶ

・フィリピン:宗教の話、収入の話、人前で怒鳴らない、

・アメリカ:食事の際はすすらない、チップを払わない、ドアを閉める

事前に赴任先の基本的なビジネスマナーはインプットしておくと良いでしょう。



海外赴任前研修の事例紹介

最後に海外赴任前研修事例を2つご紹介させていただきます。

【CASE 1】
残された時間は2ヶ月!初級者向け突貫工事研修とは


海外赴任の辞令が数か月前に出るという企業様も多いのではないでしょうか。

CASE1は2ヵ月間という短期間で研修を実施されたA社の事例です。

  • 海外赴任までの準備期間:
    2ヶ月間

  • 海外赴任目的:
    トレーニー制度の一貫として

  • 研修目標:
    実務で使う頻出表現やロープレ等、実務で使いこなすためのトレーニングを中心に実施し現地でスムーズに業務開始できる状態を目指す。今回は短期研修ので定量面での設定は難しかったものの、あるべき姿をB1と定めました。

  • 課題・ご要望:
    └これまで英会話スクールを海外赴任前研修として活用していたが、業務との両立が難しく、結果十分な学習時間が確保できなかった
    └とにかく時間がないので短期間で効率的な学習がでいる研修を提供したい

  • 研修の組み立て方:

<STEP1> 現状把握・発話量に注力

対象者がどのレベルにいるかで今何をすべきかが異なるため、まず英語スピーキングテスト
「PROGOS」を受験した結果、対象者はA2の初中級レベル。また「スムーズに業務が開始できるよう英語に慣れた状態」とし、あるべき姿をB1と定めました。理想とするレベルB1と現状との間にはGAPがあることが分かったので、「完璧な話し方を身につける」状態になることを目指すのではなく実務で使う頻出表現やロープレ等、実務で使いこなすためのトレーニングを中心とした研修内容を設計することに。まずは会話量を確保するために1日2回レッスン受講できるオンライン英会話毎日50分プランを受講し実務で使える「型」を身に着けました。

 

<STEP3:2ヵ月目> ビジネススキル、英語実務力の強化

一定の英語スピーキング力が備わった段階で残りの期間は業務に即した内容を徹底的に強化しました。ここでは1ヵ月目に行っていたような「英語の話し方」だけではなく、異文化理解、
マナー研修などを加えてトータルでインプットしました。

  • 効果:
    └ オンライン英会話の受講率は80%超えを維持することができた
    └ 通学不要となり受講者の負担が軽減し、業務と両立しながら継続的な学習が可能になった
    同額の予算で学習量を増やすことができた

  • ワンポイントアドバイス:

今回は対象が初中級者であったため、「発話量」を最初注目しましたが、既にB1以上お持ちの方であれば、最初から英語力維持・向上のためにオンライン英会話を活用し、プラスでネイティブ講師による研修も並行して取り入れるとより効果的です。

事前の準備期間が短いケースは渡航後も研修を継続されることをおすすめします。
本受講者さまも海外よりオンライン英会話を継続受講中されておりました!

【CASE 2】
準備期間は約1年!レベル7を目指す研修設計とは

もともとは海外赴任前研修は渡航前の3ヵ月間だけ実施していたB社。しかし3ヵ月間だけでは習得しきれず、現地法人からもスムーズに仕事ができないことから人材育成に関して意見があがり研修制度を一新しました。
まず、海外赴任候補者リストを作成し赴任者の現状レベルを参考に最長1年間の研修を設計。

候補者によって研修期間・内容をカスタマイズできるようにしておりますが、本記事では1年間のフルパッケージ研修のご紹介です。

  • 海外赴任までの準備時間:
    約1年

  • 海外赴任目的:
    現地法人の管理・指揮命令として

  • 研修目標:
    B1high(レアジョブレベル7)

  • 課題・ご要望:
    └ マネージャークラスが赴任するのでB1high(レアジョブレベル7)相当の英語力を
      身につけさせたい

 └ビジネス英語の型を覚えるだけではなく、現地で使いこなせる英語運用能力を身に着けたい

 └実務と両立可能な研修設計を組みたい

  • 研修の組み立て方:

<STEP1:1~4ヵ月> 現状把握+基礎力強化月間

CASE1と同様、まず英語スピーキングテスト「PROGOS」を受験し対象者の現状レベル把握。
本受講者はA2high(レアジョブレベル5)でスタートしました。
まず英語の基礎力をきちんと補うべく、日本人講師によるTOEIC®対策などを活用した英語基礎力向上レッスンを実施。またアウトプットの場としては、レアジョブ英会話を活用しました。

※前述でも記載の通り、初級者であれど必ずアウトプットの場を設けることがポイントです!

 

<STEP2:5~8ヵ月> 実務で使える英語の型を身に着ける

B1(レアジョブレベル6)以上を目指すためには自分の弱点を正確に把握し補強する学習環境が必要になります。レアジョブ英会話で発話量を担保するだけではなかなかこの点を補うことが難しく、スマートメソッド®コースで約16週間集中的に学習しA2high(レベル5)→B1(レベル6)まで引きあげました。

<STEP3:9~12ヵ月> 1on1でのビジネス研修

これまでは「ビジネス英語を身に着ける」ことに特化しておりましたが、後半の4カ月は、

よりリアルなビジネスシーンを想定しながら習得した英語スキルを自分の言葉でアウトプットできるよう徹底的に練習していきます。

本ケースは赴任先が米国だったためアメリカのネイティブ講師をアサインし、実際にディスカッション、プレゼンテーション、商談、様々なシーンを想定したビジネスロープレを週1回実施。

また週1回のビジネスロープレの場を「本番」と捉え、レアジョブ英会話を「練習」として補助的に活用していきました。

このように、その人のレベルに合わせた段階的に研修設計を設けた結果、1年を通してA2high(レアジョブレベル5)→B1high(レアジョブレベル7)に到達することができました。

  • 効果:
    全プログラムがオンライン完結のため受講時間や受講場所の制約なく、業務と両立しながら走りぬくことができた
    学習レベルに合った研修を設計をしたことで、計画的にレベルアップすることができた
    ビジネススキル強化も反映させることで現地に行った際、混乱を最小限にとどめスムーズに業務開始することができた

  • ワンポイントアドバイス:

1on1のオフライン研修は多くの場合、日本人講師かネイティブ講師かで選択ができます。受講者がまだ英語に慣れていない、意思疎通が困難であれば日本人講師を選択すると良いでしょう。例えば会話の中で生まれる「a」と「an」の使い分けなど細かいところを外国人講師聞いても何を言っているかわからず、理解に時間を要したり、結局解決されずに終わってしまうケースが多いためです。また定期的にその人が持っている力を測定し、レベルにあった研修内容を相談して決めていきましょう。

 

最後に

いかがでしたでしょうか。

 

海外赴任は事前準備が現地でのパフォーマンスの成否を分けます。英語スピーキング力はもちろん、今回挙げさせていただいた異文化理解・ビジネスマナー以外にも様々な能力が必要になってきます。ぜひこの機会に改めて見直してみてはいかがでしょうか。

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