CEFRを英語基準として導入している企業の事例紹介

2022.04.22

 

これまで3回にわたって企業がCEFR(Common European Framework of Reference for Language:ヨーロッパ言語共通参照枠)を英語力基準として使うべき理由を説明してきました。

1.  スキル基準としての国際通用性と汎用性

2.  4技能ごとにCEFRレベルで評価できること

3.CEFRが実践的な言語運用能力を重視していること

 

CEFRについてのまとめとして、今回は実際にCEFRを英語基準として導入している企業の事例をご紹介します。CEFRの活用をご検討の企業担当者の皆様に参考にしていただけると幸いです。

CEFR活用導入の際には、自社のグローバル戦略とそれを担う部門と人材像、人材の具体的なポジション・役割とCEFRレベルと照らし合わせ、どのレベルがその役割に必要かというストーリーがきちんと描けることが大切です。

活用方法としては、人事企画に関わることとして、タレントマネジメント、ジョブ定義、採用・配置の要件のひとつとして活用するなどがあります。また育成に関わることとして、研修設計、若手・選抜研修、さらに自己啓発などです。

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本コラムでは、次の6つの事例を厳選してお届けします。

事例1: 英語のアウトプット要件をCEFRレベルで明示

事例2: 新卒採用で将来のキャリアイメージを広げる機会として

事例3: 全社的な研修体系の段階別ゴール設定に

事例4: 海外赴任が多い業種のため、要件としてCEFR B2を設定

事例5: 海外のITエンジニア採用のために英語公用語化とCEFRを導入

事例6: 顧客サービスの優位性を築くため社員のスピーキング力を可視化

企業活用事例1:
英語のアウトプット力要件をCEFRレベルで明示

ポイント!
アウトプット力要件をCEFR B1Highでと明示。学習とテストは機会提供。

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海外拠点を多くもち、積極的にブローバル事業を展開する某コンサルティングファームでは、TOEIC@LRのスコアを社員の英語力を把握する指標に使ってきました。しかし、インプット力のスコアが高いからといって、グローバルビジネスの現場でコンサルタントに期待される業務を遂行するために必要なアウトプット力が必ずしもあることとは言えないことがわかってきました。そこで特にスピーキング力を重視してCEFR-Jで最低B1Highを要件として設定し、現状を把握するためにCEFR準拠のスピーキングテストを導入しました。

 

コンサルタントのような専門職は通常業務においても多忙なことが多く、担当するプロジェクトのサイクルにより業務繁忙期の波が違います。そのため、一時期に社内で一斉に何かに取り組むということは難しく、英語研修は自己啓発として希望する社員がそれぞれで利用しています。

具体的には、オンライン英会話レッスンとスマホアプリを提供していますが、学習タイミングや頻度は個人任せです。今回のケースでは、クリアする目標としてCEFRレベルB1Highを明確に定めました。CEFRレベルを証明するテストを導入する際も、時間と場所をコンサルタント本人が決められること、海外拠点の社員も受験できることがポイントでした。それぞれがテストを受験した結果を、人事担当者が管理サイトで把握しています。

企業活用事例2:
新卒採用で将来のキャリアイメージを広げる機会として

ポイント!
CEFR準拠のテストを、選別でなく将来のキャリアイメージを広げてもらうために提供


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外資系何某大手流通会社は日本支社でもかなりの数の新卒を採用します。ただ外資系といっても日本で英語を使う部署は限られていて、英語力が採用の基準になっているわけでもありません。しかし同社が大切にしているのは、主体性をもって仕事に取り組み、やったことのない仕事にも積極的に取り組むチャレンジ精神、失敗しても工夫を重ねやり遂げる行動力を備え、自律的に学び成長していくという人材像でした。英語ができる、できないにかかわらず与えられたチャンスに積極的に取り組むかという点で、CEFRに基づくスピーキングテストPROGOSの受験機会を応募者に提供したところ、9割以上が受験しました。

 

入社前に、「グローバルにキャリアを広げていくには、どのくらいの英語力がいるのか」という意識付けができれば、将来目指すキャリアのスコープがおのずと広がります。採用側も、こうした気概をもった人を望んでいます。

 

※日本で外資系企業に就職するときに、将来、日本国内のローカルスタッフとしてキャリアを積んでいくか、グローバルなポジションを目指すかどちらを目指しますかと言ったら、前者のほうが多いのが現状です。海外本社の採用トラックでないとだめだろうと、最初からあきらめている人もいます。こんな背景からか、経営層やグローバルな幹部ポジションに就く日本人はまだまだ少数です。しかし、多くの外資系企業ではどこかの国でポジションが空くと国・地域を問わず、社内公募することが多くあります。そんなチャンスを生かすためにはどのくらの英語力レベルが必要なのでしょう。海外のIndeedAdecco, Randstadなどに求人をだしているグローバル企業では、採用条件の英語レベルはC1が多く、たまにB2があります。これらの情報が目標レベルの参考になります。

 

企業活用事例3:
全社的な研修体系の段階別ゴール設定に

ポイント!
CEFRレベルを用いた研修体系を作り、社員の英語力学習の習慣化に成功

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某大手メーカーは中期経営計画のなかで、すでに高い海外売り上げ比率をさらに高める戦略を発表しています。それを実現するためには、人事制度改革、外国人幹部・社員の積極的採用と合わせ、国内の日本人社員の育成が不可欠でした。国内では、一部の社員でなく社内に広くグローバルビジネスに目をむける意識を醸成し、多くの社員が実践的な英語力や異文化対応力、グローバルビジネススキルを習得することが必要になります。英語力については特にスピーキング力不足が外国人幹部から指摘されていました。

その施策として3カ年計画でグローバルコミュニケーション力を育成する研修体系を作りました。その体系ではCEFRスピーキング力を、研修レベルを分ける基準とし、A1, A2, B1以上という区切りでそれぞれのレベルに合わせて研修内容を組んでいます。

 

同社では何千人という社員がこの制度を利用し、かつ研修終了後も自発的に学習を継続し習慣化することができています。社員数が多いメーカーで、社内で広く英語力の底上げを図っていくのは、研修担当部門にとってかなりの力仕事です。トップからのメッセージや、社内のいろいろなレイヤーへの働きかけなどの努力に加え、現状の実力からゴールに至るロードマップを、CEFRを用いたわかりやすい研修体系として示すことが有効でした。

企業活用事例4:
海外赴任が多い業種のため、要件としてCEFR B2を設定

ポイント!
海外赴任のキャリアトラックが主流のため4技能でB2を要件化

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某社では4技能でB2レベル以上を海外赴任の要件にしています。現地で同僚や部下とのコミュニケーション、パートナー企業や顧客企業との商談や折衝など、高い英語実務能力が求められるからです。それに必要なレベルとしてCEFR B2を設定しました。そして最初の海外赴任になることが多い入社3年目くらいまでに、社員はB2取得を目指して学習します。

 

同社では殆どの新卒が、入社時にすでにTOEIC®LR800点以上を取得していますので、インプット能力(Listening, Reading)についてはほぼB2をクリアしていることになります。一方、アウトプット能力(Speaking, Writing)ではB2に満たない社員も多いため、これらの能力を伸ばす研修の機会を設けており、それ以外でも自主的に学習しています。

 

※日本の若手ビジネスパーソンにとって、長期留学の経験でもない限りスピーキングでB2以上というのはかなり高い基準です。しかし赴任先で「4技能でB2」が十分なレベルかというと必ずしもそうとも言えず、実務を通して専門性とともにさらに磨きをかけているようです。参考までに、韓国の大企業では入社時にTOEIC LRなら900点以上、4技能においてC1レベル近くを求めています。

企業活用事例5:
海外のITエンジニア採用のために英語公用語化とCEFRを導入

ポイント!
CEFR-Jを用いて英語を用いてできることを明確に定義し英語力を評価

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某グローバルIT企業では、国内事業を中心に展開していますが競争力を高めるために、海外から優秀なエンジニアを雇うことに迫られていました。外国人エンジニアの採用や維持のため、英語を社内の公用語と定めました。これまで英語を使う機会がなかった国内のエンジニアや営業スタッフと外国人エンジニアでのコミュニケーションがうまくいくようなイベント交流会など様々な工夫をしましたが、根本的な解決は、大きすぎる英語コミュニケーション力の差を埋める策にあるということになりました。
アジアからのエンジニアはC1レベルの英語力がすでにあるのですが、社内ではB1未満の社員が大半だったためです。そこで日本人社員の英語力を細かく段階的にレベルアップを図っていくためにCEFR-Jを用いて英語コミュニケーション能力基準を明らかにし、ステップバイステップの英語力向上を促進しています。

※C1レベル保持者にはインセンティブを支払うなど、高度な英語力を有する社員には目に見える形でのメリットも設けています。国際通用性のあるCEFRで英語能力の価値を測り、日本人外国人を問わずスキルに対する報酬として認めていくことは、ジョブ型を導入する企業にとっても参考になる取組みです。

企業活用事例6:
顧客サービスの優位性を築くため社員のスピーキング力を可視化

ポイント!
外国人対応が必要な社員数千人の英語スピーキング力をCEFRで可視化


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業務上、外国人への接客が多い某社では、入社時に提出されるTOEIC®LRのスコアと独自の社内テストで英語力をチェックし、新人研修では定型的な言い回しや定型文などを使いこなせるように研修を行っていました。しかしその後は、社員が実際にどのくらいの英語対応能力があるのかは把握しておらず、顧客サービス面で他社と比較したところ、何等かの対策が必要となっていました。

顧客対応は、生のコミュニケーションのやりとりですから、リスニングである程度わかっていても、スピーキングが定型文しかできないと成り立たないわけです。また話すときもローコンテクスト*でいかないと伝わらないので、日本語を単純に英語に直しただけでは、せっかくのホスピタリティも理解してもらえません。

 

このような背景から、業務でよく使う英語表現だけでなく、スピーキング力全般を高めていかないといけないということになりました。その第一歩として、現状の社員のスピーキング力をCEFRレベルで可視化しようという取り組みが始まりました。結果としては、やはり十分なスピーキング能力を備えていない社員が多いことがわかり、自主的な学習も広がっていきました。

 

*異文化間で、非言語要素より言語要素に負うところが多いコミュニケーションスタイル。言わなくても分かり合えることは少なく、言わなければ通じないことが前提。

 

 

以上、CEFRの企業での活用事例をご紹介してまいりました。
これらの事例は当社が提供する英語スピーキングテストPROGOSを活用しています。

 

企業がCEFR活用するにあたり、まずはCEFRレベルで社員のスピーキング力を把握するテストを検討されると思います。この用途において、PROGOSテストは次のような使いやすさを持っています。

 

・何千何万という社員が受験しても、人事の手離れが良く、安価で、利便性も高く、社員全体の英語力を可視化することができ、タレントマネジメントなどにも活用できること

・体重計のように何度も気軽に受験できるため、社員のレベルアップの状況把握や学習の習慣化につながること

 

今回まで計4回にわたり英語力指標CEFRの企業での活用について解説してまいりました。
企業のグローバル戦略を実行するうえで、社員の英語力を把握し高めるために、CEFRをお役立ていただければ幸いです。

 

・PROGOSテスト無料トライアルはこちら

・PROGOSテストの活用についてのお問い合わせはこちら

 

お知らせ

書籍出版・セミナー開催のご案内

 

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取締役会長 安藤 益代による著書「英語力こそが『最強の武器』になる! -先が見えない時代のキャリア自律のすすめ -(アマゾン電子書籍)を出版しました。
社員に英語学習に積極的にとりくんでもらうにはどうしたらよいか?という人事や育成担当の皆様の課題の解決にお役に立つ本です。ぜひ一度詳細をご確認ください。
https://www.progos.co.jp/lp/book

 

・書籍出版記念ウェビナー開催!
20220518_pc書籍出版に際し、5月18日(水)に「『英語力こそが「最強の武器」になる』~社員の英語学習のモチベーションを高める秘訣~」出版記念セミナーを開催いたします。

日本におけるCEFR研究の第一人者、東京外国語大学/投野由紀夫教授も登壇し、CEFRについてお話しいただきます。
ウェビナー参加者には書籍贈呈の特典もありますので、ぜひご参加ください。

 

▽セミナー概要
・開催日時:2022年5月18日(水)13:00-14:25
・開催形式:オンライン形式 ウェビナー
※Zoomを使用いたします。Wi-Fi環境など高速通信が可能な電波の良い所でご視聴ください
※リアルタイム配信のみとなっており、録画視聴はできませんのでご了承ください
・定員:100名 ※定員になり次第締め切らせていただきます
・参加費:無料

・セミナー詳細、お申込み:https://www.progos.co.jp/seminar/20220518

 

 

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