スキル基準としての国際通用性と汎用性 - CEFR(セファール)を英語力基準に

2022.03.11

 

前回は人的資本開示やジョブ定義の流れをふまえ、グローバル人材のスキルセットの再定義につ

いて考察しました。これからの数回は、スキルセットのうちグローバルビジネスの共通語である英語のスキルについてみていきます。

企業がもつべき英語力基準はCEFR

皆さんの会社では、英語力については何らかの社内基準を設けていますか?

ビジネス英語テストとして広く知られているTOEIC®LRのスコアを基準にしている企業も多いでしょう。TOEIC®LRは信頼性の高い優れたテストです。一方、リスニング・リーディングの能力だけを英語力基準にすることに疑問を感じている方も少なくないのではと思います。

 

これからは、グローバル戦略を担う人材がもつべき語学力基準として、CEFRを使うことをお勧めします。

CEFRは「セファール」あるいは「シーイーエフアール」と読み、Common European Framework of Reference for Languagesの頭文字をとったものです。日本語では「ヨーロッパ言語共通参照枠」と訳します。その名の通り、多言語社会であるヨーロッパで、いろいろな言語の学習者の評価、学習、指導のために使う共通の枠組みが必要だということから開発され2001年から活用が始まり、その後ヨーロッパだけでなく世界に普及していきました。

 

CEFRが使われているのは英語だけでなく、ドイツ語、フランス語、スペイン語などの欧州の言語、さらには日本語も含め約40言語あります。共通の英語力基準を作ろうという取り組みはアメリカのACTFLなどもありますが、CEFRは汎用性の高い枠組みとして国を超えて広がっています。

 

グローバルに拠点展開をする企業にとって、CEFRは多くの言語力のモノサシとして使えるのでとても便利です。例えば日本の企業に勤務するアメリカ人がメキシコに赴任する際、どのくらいスペイン語を話せるかを知りたいというときにはスペイン語のCEFRレベルをチェックすればよいわけです。

 

さて、英語に話を戻しましょう。CEFRを企業の英語力基準として使うことをお勧めする理由は次の3つです。

 

1.スキル基準としての国際通用性と汎用性

2.4技能ごとにCEFRレベルで評価できること

3.実践的な言語運用能力を重視していること

 

今回はその最初の理由である、CEFRの「スキル基準としての国際通用性と汎用性」について説明していきます。

 

1.スキル基準としての国際通用性と汎用性

国際通用性のあるCEFR

CEFRが普及するまでは、国際的に誰もがわかる英語力の「モノサシ」というものは存在しませんでした。様々なテストが、独自に定める点数や級で英語力を示し、そもそもその前提として各テストが定義する語学力の構成要素や評価の観点や評価方法もばらばらです。

 

これは企業人事にとっても頭が痛い問題で、例えば「Aテストでこのスコアをとった人とBテストでこのレベルをとった人では、どちらの実力が上なのか」ということを知りたくても、よくわかりません。違うテスト間で結果を比較するということは、りんごとみかんを比べているようなものだからです。

 

また、日本国内では誰もが知っていて受験者が多くても、日本の外にいくと認知度が低いというテストもあります。世界のどの国でもよく知られていて、これさえ受ければグローバルスタンダードだという英語テストは存在しませんでした。

 

ビジネスのグローバル化がどんどん進んでいるにもかかわらず、世界共通の英語力の「モノサシ」がないため、人事担当者はたとえば、次のような課題に直面します。

 

・グローバル採用の英語力条件として何を示せばよいか?

・非英語圏のローカルスタッフに英語力を求めるときに何を拠り所にしたらよいか?

・そもそも日本人社員の英語力基準はガラパゴス化していないか?

 

この課題を一機に解決するのがCEFR です。CEFRは国際通用性のある言語能力のガイドラインとして2001年に欧州評議会で使い始めてから、瞬く間に多くの国に広がっていきました。とくに英語では、すでに日本を含めアジア諸国の英語教育政策の基準として使われていますし、学術研究でも研究者が用いる語学力のレベルはCEFRです。社会人の間でも、労働ビザ申請の際の語学力証明として使われています。企業では、採用時の英語要件や、英語スキルの基準として活用されています。今や、CEFRは語学力の正解共通の「モノサシ」なのです。

 

ところで「CEFRというテストがあるのですか?」というよく質問を受けることがあります。CEFRは、テスト、授業、学習に使える参照枠のことで、CEFRというブランド名のテストが存在するわけではありません。「CEFRのテスト」と呼ぶのは、CEFRが定めている語学力の定義やレベルやCAN-DO、さらにそれにもとづくテストのガイドラインに準拠して設計・開発され、結果もCEFRレベルで示されるテストのことです。例えば、PROGOSLingua SkillIELTS、ケンブリッジ英語検定試験などがこれにあたります。これらは「CEFRのテスト」あるいは「CEFR準拠のテスト」と言われています。

 

CEFRのレベルとは?

CEFRとはどんなレベル分けになっているかをご紹介しましょう。

CEFRでは語学力をA1からC2までの6つのレベルに分け、A1A2を基礎段階の言語使用者、B1B2を自立した言語使用者、C1C2を熟達した言語使用者と呼んでいます。最近ではA1の下にpre-A1というレベルが加わりました。

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2018年に改訂されたCEFRの解説書の中では「ネイティブ」という言葉が使われなくなっています。ネイティブがお手本、ネイティブならよい、ということでなく、CEFRの枠組みに従って言語運用能力を判断するのだという考え方を明確にしたのです。

 

今や、世界の英語使用者はネイティブよりノンネイティブのほうがはるかに多く、英語はグローバルビジネスでの共通語となりました。ノンネイティブ同士が英語でビジネスを行うことは、ごく自然で当たり前になっています。CEFRの考え方はこの時代の流れに則していると言えるでしょう。

 

目標とすべきレベル

グローバルビジネスではどのくらいのレベルの英語力が求められるのでしょうか?すこし具体例をみていきましょう。

外資系の大手グローバル企業の求人情報では、必要とされる英語力要件はC1以上がほとんどで、まれに職種によってはB2があります。グローバル採用の英語力基準はC1以上になっているようです。また英語圏の有名大学への出願基準としてはC1、非英語圏の大学ではB2とされることが多いです。ちなみに中国・韓国・台湾の高校の英語教科書の語彙レベルはB2です。

 

日本の文部科学省が2019年度に実施した「英語教育実施状況調査」によると、A2レベル以上の英語力を持っている高校生は43.6%で年々上昇傾向にあるようです。ただ多くがまだ、基礎段階にあると言えます。実は日本にCEFRを導入する際に、低レベル層が多いためCEFRの基礎段階を細かく分ける必要があり、「CEFR-J」という細分化されたレベルが日本用に開発されたという経緯があります。

 

では日本のビジネスパーソンはどうでしょうか?日本企業を対象としたある大規模研究調査によると、英語を使う部署では英語4技能総合でB1以上, 英語を使う部署で管理職などの責任あるポジションにある人ならB2以上が必要と、企業担当者は認識していることがわかっています。ところが実態は1レベル以上のギャップがあるとされています。私たちが行ったビジネス英語スピーキングテストPROGOSの調査結果によると、スピーキング能力で受験者が最多だったCEFRレベルはA2です。

 

■日本企業が必要だとしている英語力の目安

英語使用部署の管理職  4技能でB2以上
英語使用部署の社員 4技能でB1以上

 

こうした比較が可能になることは、共通のモノサシCEFRならではの利点です。

 

他テストも換算可能

CEFRがモノサシとして使えるというもう一つの背景は、CEFR準拠以外の他テストがCEFRへの換算をするようになったということです。CEFRがテストや指導・学習・学術研究などで世界に普及していくにつれ、その他のテストも徐々に独自の評価結果をCEFRレベルに換算して提示するようになりました。語学力の観点やテストの評価の観点やテスト設計は異なるものの、換算表を使えば、このテストはCEFRでいうと大体このくらいということがわかります。例えばTOEIC®TOEFL®、英検にはCEFRへの換算表があります。他テストで換算表が増えたというのはCEFRが共通のモノサシとして世の中に浸透してきた証拠とも言えます。

 

企業にとっては、語学力はすべてCEFRレベルで統一して可視化できるというメリットがあります。例えば、リスニング力とリーディング力のCEFRを得たいなら、TOEIC®のスコアをCEFRに換算すればいいので、これまでの取り組みや既存のテストデータが無駄にならないのです。

 

ビジネス現場で瞬発力が問われるスピーキング力については、測定の必要性を感じつつも、これから導入という企業も多いと思います。スピーキング力については、PROGOSのような手軽に導入できるCEFR準拠のテストを用いて、直接CEFRレベルで評価すればシンプルです。

 

以上、CEFRのグローバルな通用性、既存テストからの換算も含めた汎用性についてご説明しました。

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