【セミナーレポート】オリンパスが取り組むグローバルコミュニケーション改革 ~スピーキングテスト「PROGOS」で実現させる未来への投資~

2022.03.07


英語のコミュニケーション力に長けた人材の育成は、多くの企業にとって最重要課題の一つです。ところがいざ研修を実施すると「部署により英語の必要度が異なり、社員の学習モチベーションにもバラつきがある」「学習意欲が続かず、研修終了後はまた元に戻ってしまう」といった声も多く聞かれます。

 

当社が2021122日に開催したセミナー「オリンパスが取り組むグローバルコミュニケーション改革 ~スピーキングテストPROGOSで実現させる未来への投資~」では、オリンパス株式会社の人事部から2名様にご登壇いただき、同社が昨年から取り組んでいる「グローバルコミュニケーション施策」についてお話を伺いました。関連会社も含めた従業員約4,000名様にご活用いただいた施策の概要と実施の背景、学習習慣を定着させるために行なった取り組みは、既にグローバル展開を遂げている企業はもちろん、将来的に海外市場拡大を計画している企業の皆様にとっても、大いに参考になるのではないでしょうか。


【登壇者】

・玉澤 康至 氏
 オリンパス株式会社 HR Organization Development Director

・小幡 幸宏 氏
 オリンパス株式会社 HR Organization L&Dビジネス担当

 



 

1.企業のパーパスを始点に

(玉澤氏)今回の取り組みについてお話しする前に、まずは少しだけ当社の概要をご説明させていただきます。


オリンパスは、企業のパーパス(存在意義)として「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」という理念を掲げています。このパーパスと、パーパスにつながる価値観として設定した誠実・共感・長期的視点・俊敏・結束という5つのコアバリューは、グローバルも含めた全従業員の行動の指針になっています。


事業領域は、内視鏡や治療機器などの医療事業が中心です。内視鏡については、1950年に世界で初めてガストロカメラを実用化して以来さまざまな技術を発展させ、現在も約70%という高い世界シェアを有しています。2021年3月期の売上は8割以上が海外で、グローバルの従業員は約32,000人、拠点のある国や地域は世界に40あります。我々がグローバルメドテックカンパニーを目指す背景にはこういった現状があります。








2.真のグローバルメドテック企業になるための経営戦略

(玉澤氏)これらの現状を踏まえて当社では、経営戦略や事業戦略を立てるとともに、2019年からは「真のグローバルメドテック企業」を目指す企業改革プラン“Transform Olympus”に
取り組んでいます。




Transform Olympusの具体的な取り組みとしては、例えばグローバルグループ一体経営体制へ転換、グローバル人事制度の転換などがあります。グローバルグループ一体経営体制への転換は、複数のリージョンをいかに一体化して経営していくか、さらにはその中でどのように新たな執行体制を構築し、責任の所在を明確化していくかといったことです。人事制度に関しては、
人材と機能のグローバル最適配置を目指すべく徹底的にスピードアップを図っており、
その結果、2019年には22人中3人だったシニアマネジメント層の外国人社員は、2021年7月時には30人中15人にまで増えました。

 

 

3. 英語コミュニケーションの必要性の認知が広がる

(玉澤氏)Transform Olympusへの取り組みによりグローバル組織がハイブリッド化したことに伴い、上司が外国人になった、あるいは海外との会議が急激に増えたという社員から「業務で使える英語力を身に付けたい」という要望が上がるようになりました。そのような社員の声を受けて、経営陣が発表したのが次のようなガイドラインです。


英語でのコミュニケーションの必要性が認知され始めたことから、社内の「公用語」を英語にするべきかとの議論も当初はありましたが、このガイドラインは、英語はさまざまな国籍の社員が参加するプロジェクトや会議での「共通言語」として使うものだということを明示しています。ここには「言語を含めた多様性を重視する」という経営陣のメッセージが含まれているのです。

このような流れを受けて2021年4月から始まった我々の「グローバルコミュニケーション施策」ですが、現在まだ認知活動、つまり英語の必要性を感じてもらいながら英語の学習方法を学び英語力を高めるという段階です。本施策の最終的な目標は、海外の拠点間で英語を使用してコミュニケーションを取り、戦略を実行できる体制を作ることだと私たちは考えています。

 

 

4. 課題解決に必要な3つのスキル

(小幡氏)ここからは小幡が説明をさせていただきます。こうして英語でのコミュニケーションの必要性を認識した私たちは、初めに「課題の抽出」を行いしました。まずは施策のコンセプトを「言語文化的背景を理解し、ビジネスにおける英語によるコミュニケーション力の向上を目指す」ことと定義し、その実現には

 

・ビジネススキル
・英語力
・異文化理解

 

という3つのスキル、さらにこれらのスキルを駆使してグローバルで仕事をしようという意識や、そういった意識を育む土壌のようなものが社内に存在することが大切だと考えました。
また、日本人のグローバルコミュニケーション力は、他のリージョンと比べて圧倒的に不足しているという危機感があったため、施策の対象は限定せず、日本国内のオリンパスグループ従業員全員としました。


課題を抽出したことで、異文化理解の大切さが理解されていない、学んだ学習法を体系的に実践する場がない、受講対象者も業務で英語を必要とする従業員に限られているといった従来の英語研修の問題点も浮かび上がってきました。ここにさらに追い討ちをかけたのが、COVID-19です。それまでほぼすべての研修が集合対面形式だったため、コロナウイルスの感染拡大に伴い、オリンパスの英語教育はすべて停止することになりました。

 

これらの分析結果を鑑み、新しい施策では「国籍拠点に関係なく英語でのコミュニケーションを取りながら仕事ができている状態」を目標に据え、

 

・継続性があること

・学びと練習が体系的に結びついていること

・誰でも参加可能であること

・異文化を理解すること

・スピーキング力を計測すること

・すべてオンラインで実施可能であること

 

という6つのポイント全てを満たすプログラムの構築を検討しました。

 

 

 

5.レベル別のプログラム設計


(小幡氏)検討の結果、決定したプログラムの概要は図の通りです。


プログラムは、スキルチェックテストで測定した英語レベルに応じて 

・Basicコース
・Standardコース
・Advancedコース 

の三段階に分けて実施し、初年度は Basic コースと Standard コースのみを開講しました。
スキルチェックのテストにはCEFRベースでスピーキング力を測定できるPROGOS(※)を採用し、結果がA1だった場合はBasicコースを、A2だった場合はStandardコースを受講、Advancedコースはまだ稼働していませんが、ビジネスシーンで活用するための実践演習を狙いとしたプログラムを前提に検討を進めることとしました。

 

学習の素材としては、英語習得のトレーニングにはアプリ学習やオンライン英会話を、もう一つの必須履修項目である異文化理解のプログラムには、オリンパスがグローバルで展開するEラーニングを採用しました。各コースは16カ月で、従業員はBasicStandardAdvancedの各コースを1回ずつ会社負担で受講することができます。(注※)

例えばBasicコースを会社負担で受講した後も自己負担で学習を継続し、次のPROGOSA2レベルに到達すれば、次はStandardコースを会社負担で受講できるというわけです。

※2022年4月以降は、受講条件によって同一コースを複数回受験できるようになります。


学習の継続こそが真の狙い。やる気を保つ追加施策も実施

多くの皆さんもご存知の通り、6カ月の学習で実力が大幅に伸びるほど、英語習得は簡単ではありません。ここで大切なのは、英語学習を習慣化し、継続することです。次のコースにレベルアップすればまた会社負担で受講できることをインセンティブとして、1回目の受講が終わっても学習意欲を維持する。これこそが、このプログラムの真の狙いです。 また一方で、受講率の良くない従業員には費用の一部を負担してもらうというルールも取り入れ、受講率の確認は毎週行いました。


ところが、受講開始後3カ月が経過した6月時点で調査を行ったところ、Basicコースでは約6割、Standardコースでは約4割が受講率の低さから自己負担になってしまうペースで学習を行なっていることがわかりました。その理由を確認すると、「習慣化が難しい」という答えが多く返ってきたため、受講者のモチベーションを喚起するとともに、サステナブルな学習を促進する施策として、習慣化に成功している受講者による秘訣紹介、プロゴス社によるセミナーやスピーキングテストの追加、グローバル会議への参加機会提供などを実施しました。



 

6. 学習の習慣化に大きな効果


(小幡氏)こうして行った第一期は、Basicコースに1,842名、Standardコースに1,201名、合計で3,043名が参加しました。 受講率が低く、自己負担ペースだった学習者の割合も、最終的にはBasicコース、Standardコースともに減少し、PROGOSの結果も約5割の従業員が受講前よりもレベルアップするなど、半年間の学習としては大きな効果を得ることができたと思っています。

 

また、受講前と後に行ったアンケート結果を見ると、「グローバルコミュニケーションを意識している」という項目で多くの従業員の意識が改善されていることがわかります。「学習を習慣化できた」と答えた人がStandardコース受講者の94にも上ったこと、 受講者の90%が「プログラム終了後も学習を継続する」と回答したことも、本施策の成果と考えられます。




7. PROGOSを利用してよかった点

(小幡)PROGOSを利用して良かった点は、英語のスピーキング力を言語運用能力指標のグローバルスタンダードであるCEFRで測定できることです。もう一つ、いつでもどこでもたったの20分で受験可能で、しかも受験後数分で結果が手元にメールで届くという利便性もPROGOSの大きなメリットでしょう。 我々の行ったプログラムでは、申し込みに時にPROGOSの受験結果が必要だったため、すぐに結果が出るのはとても助かりました。受験してから結果が出るまで数日かかるようで、せっかくの熱意も覚めてしまい、参加人数ももっと少なかったかもしれません。


オペレーションの簡易性も魅力。PROGOSが施策の目的達成に寄与 

信頼性も、PROGOS導入を決断した理由の一つです。私も初めは「20分の試験でスピーキング力を測定できるのか」と半信半疑でしたが、日本におけるCEFR研究や英語テスト理論の第一人者が監修した試験であると知り納得できましたし、社内の説得にも成功できました。 また、実際に試験を受験してみたところ、他の導入実績が豊富な試験と同じ結果が出たこと、問題構成の納得性が高かったことなども、信頼度を高めることにつながりました。

 

最後にもう一つ、忘れてはいけないのがコスト面の魅力です。2021年度はキャンペーンで無料、2022年度も一人一回税込550円という圧倒的コストパフォーマンスの良さも、採用の決め手になりました。

 

オペレーションが簡単なことも、我々運用担当者にとっては非常に大きなメリットでした。 受験者に試験リンクをメールで送付すれば、テスト結果は自動で受験者本人に送られますし、我々は管理者サイトから全受験者の結果を簡単に把握できます。また、途中で行ったそして受験回数の追加も、受講者のモチベーションをアップさせ、学習を習慣化することに寄与してくれたと思います。

正しい学習方法を習慣化すれば、短期間でも成果は上がる

今回の施策を通じて、方法論を身につけた後に学習を習慣化してアウトプットにつなげれば、半年という短期間でも英語力アップやグローバルコミュニケーションに対するマインドを改善することができることが分かりました。 来年度からはAdvancedコースを開講しますし、既存のプログラムの内容も多少は変化するかもしれませんが、受講者の学習モチベーションを喚起し、習慣化を促すという部分は変化しません。私たちはこのプログラムの参加者が増えることは、オリンパスにグローバルコミュニケーションの風土が醸成されることにつながると信じています。リージョンをまたいだコミュニケーションが容易になり、経営戦略の実現に寄与できることこそ、私たちの考えるオリンパスのグローバルコミュニケーション改革です。

 

ご清聴いただき、ありがとうございました。

 
 

8. 質疑応答

Q:初年度から約4000名もの従業員巻き込めた最大の要因は何だとお考えでしょうか?

A:(玉澤氏)基本的にはその英語の必要性を認知した人が多かったということ、さらにコロナ禍ですべてをオンラインで実施したというところが大きかったと思います。

 

Q:プログラム実施前に、従業員の学習意欲高める工夫などはしたのでしょうか?

A:(玉澤氏)やはり経営陣からガイドラインの発信があったことは大きかったと思います。細かいところでは、今回のプログラムも含めた自己啓発講座の中身を動画で伝えるポータルサイト的なものを作っていることもあるかもしれません。

 

Q:今回の取り組みを推進されるにあたって最も苦労されたことは何ですか?また、どのようにそれらを乗り越えられましたか?

A:(小幡氏)やはり学習を習慣化させることに、一番苦労しました。受講率を上げるための追加施策はプレゼン内でも紹介しましたが、それ以外にもひとりひとりにメールやMicrosoft Teamsのメッセージを送ってコンタクトを取り、何に困っているのかをヒヤリングするなど、地道な取り組みを実施しました。

 

Q:本取り組みを成功(継続)見直し(敗退)とする基準はありますでしょうか?

A:(玉澤氏)多少の修正はあっても、このプログラムは3年は大きな見直しをせずに続ける予定です。私たち仮説として考えていた成果は達成できたと考えていますので、あとはその感覚をグローバルの役員どう伝えるか、どのように共有するかを考えながら進めていこうと思っています。

 

 

 

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