脱!リスキリング迷子~人的資本経営の時代、グローバル人材に必要なビジネス英語とは~

2023.06.09

 

最近よく耳にする「リスキリング」や「人的資本経営」というキーワード。特にリスキリングでは、英語やDXなど、ビジネスシーンで求められるスキルへの注目度が高まっています。
そこで、本記事ではビジネス界隈の企業動向と合わせて、リスキリングや人的資本経営についてご説明します。(気になるけどよくわからない…)というモヤモヤを解消しましょう!

 

 

Part 1  今、話題の人的資本経営の本質

人的資本経営、リスキリング、ジョブ型、キャリア自律、賃上げなど、最近は人事関連のバズワードがよくメディアを賑わせています。でも、自分にどう影響があるのか、なかなかしっくりこない方も多いと思います。そこで超シンプルに説明してみようと思います。

「えいやっ!」と、これらのバズワードの関係性を示してみました。同時進行して起こっていることや、これ以外の要素もありますが、マクロでわかりやすくいうと、ざっとこんな感じです。

これらを一連の動きとして捉えると、ビジネスパーソン個人が進化し、成長する事業分野で活躍できるように変わりましょうという流れが見えてきます。別の言い方をすれば、日本の労働市場を支えてきた枠組みが制度疲労を起こしていて、新しい枠組みにかわりつつある転換期であるとも言えます。少子高齢化、DX,グローバル化の進展により、この流れはもう後戻りできないでしょう。
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・人的資本経営(企業の成長戦略のために必要な人への投資をする)
企業が非財務情報のひとつとして人への投資に関する情報開示をすること。背景として、企業の業績は人材力に左右されるという認識が広がったことがあります。 

・リスキリング(社員が成長分野に向け新しいスキルを身につけ直すこと)
日本は先進国のなかでoff-JTにお金を使ってきませんでした。その結果、生産性の低迷や成長分野での人材不足という問題が起きてしまったので、今、官民挙げて成長分野へのリスキリングを促進しています。

・ジョブ型(スキルを基軸に人を配置する仕組み)
ポストごとに業務をこなすのに必要なスキルが定義され、そのスキルセットをもつ人が、そのポストに就くという人事制度。必要なスキルはリスキリングで習得できます。

・キャリア自律(キャリアを自分で管理するという考え方)
会社に自分の将来を託すのではなく、自分でアンテナを張りめぐらし、次々と変わる事業環境や個人の志向に合わせて、自分でキャリアを作っていくという考え方です。

・市場価値に見合う給与(自分のキャリアやスキルを反映した収入)
リスキリングやジョブ型で人材の流動性が高まると、個人は自分のスキルセットの市場価値がわかるようになり、それに見合う給与水準を求めるようになります。

人の流動性とは、同じ会社内での異動も別の会社への転職も含まれます。流動性が高まると、企業には囲い込みではなく「優秀な人に来てもらい、居てもらう魅力づくり」が求められ、フェアな人材獲得競争が可能になります。

この一連のシフトに対して、「急にそんなことを言われても」と戸惑う人と、「変わったほうがいい」と思う人がいますが、大抵の人はその中間のどこかでしょう。いずれにしても、ビジネスパーソンも何らかの形でぬるま湯から飛び出すことが求められています。

 

Part 2 リスキリングで欠かせないものは?

最近、リスキリングという言葉を毎日のように聞きますが、学び直しとどう違うのでしょうか?
リスキリングはキャリアに直結していて仕事に必要なスキルを身につけることですが、学び直しは必ずしもそうでなく、学びたかったことを学ぶという教養や趣味も含まれる概念と言えます。

さらにリスキリングという言葉には、広い意味と狭い意味があります。広い意味では成長分野や自分が志向する分野で必要なスキルを身につけること、狭い意味ではDX分野のスキルを身につけることです。
よく耳にするのは、狭義のDXの方かもしれません。多くの日本企業はDX分野でグローバル企業に追いつかなければなりませんが、それを担うIT人材が全然足りていません。そこで企業内では、社内の人間に急いでDXのスキルを習得してもらい、人が足りない部署に異動してもらうためにリスキリングを推進しています。
また、イノベーションを起こすために、ITエンジニアでなくても、事業の現場や経営層である程度DXのことがわかり、活用アイデアがわくように全体を底上げをしようという取り組みも広がっています。

転職市場では、求人が多いIT分野への流入を促すために、ITエンジニアの資格やスキルを身につけることを支援する取り組みが強化されています。DX系のリスキリングの特徴としては、需要が高く急務であること、どんどん新しい技術が出てくるので、習得したスキルの賞味期限が比較的短く、常にアップグレードしなければいけないということが特徴です。

たとえば、今話題になっているChat GPTのような生成系AIが普及してくると、プロンプトエンジニアリング(ほしい答えを手にいれるための質問の仕方の技術)が注目され、プログラミングのスキルが、徐々にコモディティ化してしまうかもしれません。しかしながら、DX化の後戻りはないので、これからのビジネスパーソンはサバイバルのために、DXスキルの動向は、いつもマークしておく必要があるでしょう。

一方、広義のリスキリングには、いろいろなものが含まれますが、リスキリングしたいテーマの常に上位に入ってくるのが、英語力です。

たとえば、リスクモンスター社がビジネスパーソン800名に実施した調査において、高めたいと思うビジネススキルは「PCスキル」に次いで「語学力」が多い結果となりました。

 

20230609_column_4 出典:第1回「ビジネススキルアップに関する意識」調査(リスクモンスター社)

 

リスキリングの英語とは、ずばり仕事で使えるレベルの英語力です。日本の多くの企業は、シュリングする国内市場ではなかなか成長できないので、グローバル市場での事業拡大を目指しています。

下記のグラフにもある通り、コロナで一時的に停滞したとはいえ、日本企業が海外売上や海外生産を増やすという傾向は長期的には変わっていません。

 

20230609_column_3出典:わが国製造企業の海外事業展開に関する調査報告(国際協力銀行社 調査資料)

 

こうした動きのなかで、グローバルビジネスで仕事ができる人材は不足している状態です。そのために多くの企業では、社員に英語習得を促し、さまざまな学習機会を提供しています。リスキリングのテーマで英語力が上位にあがるのは、こうした背景があります。

このほか、リスキリングで英語が注目される背景には、日本企業と外資系企業の給与格差が開いていることや、DXそのものも実は世界で戦わなければいけないという事情もあります。DX系スキルも、実は英語力が加わると、日本語に訳すのを待たずに世界の最新技術や人材を活用することができます。活躍の場が外資系企業や海外に広がると、給与レベルも上がり、昇進のスピードも速くなる可能性があります。

さらに、仕事で使える英語力はメンテナンスさえすれば、スキルの賞味期限はない、一生ものです。キャリア構築に費やす時間の価値を考えたときに、仕事で使える英語力の習得は、コスパがよく、長く使えるリスキリングと言えるのではないでしょうか。

 

Part 3 リスキリングとしての英語力とは

リスキリングの英語力は、仕事で使える英語力と言いましたが、では具体的に仕事で使えるというのはどんなことなのでしょうか?
ビジネスパーソンが仕事で英語を使うときに押さえておくべき【6つのポイント】をご紹介します。

1.スピーキング力重視
仕事で最も使うのは英語の4技能のうち、スピーキングとリスニングです。海外では話し合いながら仕事をすすめることに、より重点がおかれます。

つまり《海外では、英語ができる ≒ 英語が話せる》なのです。

一方、日本人の学習は、リーディング・リスニングという受身の技能に偏ってきたので、いざ仕事で使うとなると、スピーキング力が圧倒的に足りない現実に直面します。スピーキング力重視にはこんな理由があるのです。

2.グローバル基準で実力を測る
英語力を測るテストはいろいろとありますが、海外のグローバル企業は採用時の語学力要件に、CEFR(セファール)という世界共通の英語力基準を用います。英語で仕事をするには、CEFRレベルでB2以上は最低必要だと言われ、日本人の場合、特にスピーキング力でB2をとれるように頑張らなければなりません。

とはいえ、最初からスピーキングでB2をとるのはハードルが高いので、ほとんどの人はまずはB1をクリアするところから始めるのが良いと思います。

 

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当社が提供する英語スピーキングテストPROGOSではCEFRレベルでスピーキング力を

把握することが可能です。

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3.シーン別英語対応力
ビジネスではCEFRレベルでB2以上あることが必要ですが、それに加えて、ディスカッション、プレゼンテーション、会議進行、交渉など仕事のシーン別に対応できる英語力も求められます。シーンに沿った言い方もあるし、上手くことを運ぶための表現のコツもあります。こうしたシーン別のトレーニングも英語習得の一部と考えるべきでしょう。CEFR B1以上のスピーキング力が身についたら、こうしたシーン別の対応も始めた方がよいでしょう。

4.異文化コミュニケーション
英語で仕事をするときには、文化や宗教や価値観の違う人とコミュニケーションすることになります。社内の上下のポジションや社歴にかかわらず、相手のそうした背景に尊敬の念をもって接することが基本です。そして自分の常識は、たくさんある常識のなかのひとつに過ぎないという考えることが必要です。言語の面では日本語は「察する」「行間を読む」文化に根付いているため、文化が違う相手には日本語を英語に置き換えただけでは通じません。わかりやすく詳しく論理的に表現することが、コミュニケーションのポイントになります。

5.ダイバーシティ
性別や外見など外からわかる多様性だけでなく、その人が持っているスキルや経験や価値観、つまり内面の多様化を受け入れ、活用するという意識をもって接すると良いと思います。予測不可能で変化の激しい時代だからこそ、色々な人に得意な能力を発揮してもらったり、斬新なアイデアをだしてもらうことが、同質性が生むリスクを回避することにつながります。この点を踏まえてコミュニケーションをすることが不可欠となっています。

6.グローバルマインドセット
グローバルな環境で働くときは、失敗にめげず諦めない、当たり前でないことを楽しめる、修羅場もなんとかなるさと笑い飛ばして乗り越えるくらいのマインドと行動力が必要です。仕事をする相手も同じようなマインドだという前提で、ポジティブな表現を多く使うと有効です。

以上のように、仕事で使える英語力を広い意味でとらえると、純粋な語学的要素以外のスキルもあることがわかります。そして、これらを反映したスキルアッププログラムや研修はいろいろと用意されています。
こうした機会をうまく利用して、多くの人がリスキリングし、グローバルなキャリアを広げています。

 

 

【執筆者紹介】
株式会社プロゴス 取締役会長
安藤 益代

【お話しできる分野】
サービス導入企業の事例、ビジネスパーソンのリスキリング、人的資本経営の情報開示関連など

【経歴】
野村総合研究所、ドイツ系製薬会社を経て、渡米し滞米7年半の大学院/企業勤務経験を経て帰国。企業のグローバル人事戦略/人材育成・英語コミュニケーション分野にて25年以上の経験を有する。グローバルな視点から人的資本経営、リスキリングを分析。人的資本開示ISO30414リードコンサルタント・アセッサー、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招へい研究員。 国際ビジネスコミュニケーション協会ならびにEdTech企業を経て 2020年より株式会社レアジョブに参画し、同グループで法人事業を担当するプロゴス社にて 2022年4月より現職。講演、執筆多数。

【著書】
『英語力こそが「最強の武器」になる!: 先が見えない時代のキャリア自律のすすめ』

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