【育成担当必見】PISA2025英語力調査のスピーキングテストに注目

2021.08.04

 

 

今回は、企業のグローバルリーダー育成ご担当の方が、長い目で知っておいたほうがよい情報としてOECDPISAに関する情報をお届けします。

 

 

PISA2025から英語力調査が導入される

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PISA(i)という名称をどこかできいたことがあるという方も多いと思いますが、ひとことで言うと、世界の学力比較調査です。

 

PISAでは2000年から3年ごとに実施され、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野(実施年によって、中心分野を設定して重点的に調査)について、15歳(日本では高校一年生)を対象に調査が実施されています。(ii)

 

この結果が発表されると、日本でもよくニュースで取り上げられますね。2018年の調査結果(iii)では、日本は数学的リテラシーが6位、科学的リテラシー5位と、長期的に世界トップレベルを保っています。ただし読解力はOECD平均より上にあるとはいえ、15位と過去最低になりました。これにより、読解力を伸ばさなければいけないという議論が出たように、この結果は国の教育政策にも参考にされているようです。

 

さてこのPISAですが、2025年から外国語能力調査として英語のテストが加わることになりました。英語のテストでは、リスニング力、リーディング力とスピーキング力を測定するそうで、評価基準にはCEFR(i)が使われるそうです。

 

CEFRを使うのは、すでに世界的に活用されていること、そのためPISAの結果としても各国の教育関係者や省庁が使いやすいことがあるそうです。すでに2021年にリスニングテストとスピーキングテストのパイロットが始まっています。PISA2025年の英語力調査に参加するかしないかを、各国は2022年くらいまでに意思表示しなければいけないそうです。

 

CEFR: ヨーロッパ言語共通参照枠

PISAで英語力調査を導入する背景

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OECDでは英語のテスト導入の背景として、グローバリゼーション、テクノロジーのイノベーション、人の移動の増加をあげています。そして異なる国や文化の人がやり取りすることが、益々重要になっていて外国語学習から様々な恩恵が得られると言っています。

 

たしかに世界的に有名な韓国のヒップホップグループを例にとると、YouTubeのファンによる拡散やネットを使った動員力のベースに、共通語としての英語があることがわかります。

 

さて、外国語を学ぶメリットとしてPISAでは次の3つを上げています。(iv)

1.異文化の理解

外国語で外国や異文化の人とつながると、ダイバーシティ&インクルージョンが進展する

2.経済的メリット

2か国語以上が使えると、国内外でよりよい教育やよりよい仕事に恵まれる

3.認知的メリット

外国語を学ぶと柔軟性、問題解決、抽象的思考や創造的思考などの認知能力が高まる

 

1と2は企業のグローバルリーダー育成においても馴染みのある内容かと思いますが、3つめの点は、日本では外国語を学ぶメリットにはあまり上がってこなかったので、ちょっとした発見です。

 

PISAはどの言語を外国語力調査として使うかという点について、多くの言語のなかで世界的にも標準語となりつつあるという理由で英語を選んだそうです。

PISAのスピーキングテスト

PISAの英語テスト(v)はリスニング、リーディング、スピーキングをテストするとしていますが、そのなかで一番気になるのがスピーキングテストです。スピーキングテストについては、どのくらい具体化しているのか、2021年時点の状況をちょっと調べてみました。

リーディングテストとリスニングテストは試験中に問題の成否によって難易度が変わるアダプティブ形式を使うようですが、スピーキングテストでは話すアウトプット全体から到達度を評価するので、アダプティブ形式は用いられません。

スピーキングテストの問題は15歳という年齢に合わせたタスクベースで、CEFRレベルごとのCan-Do(言語を使って何ができるかの記述)を根拠に、pre-A1からC1まで幅広いレベルを測れるようにするそうです。コンピューターベースのテストで、CEFRが定める「話すこと」のうちspoken productionを測定するとしています。内容は、音読問題、いくつかの絵をみて他と異なるものを選びその理由を述べる問題、写真をみて写真に関する質問に答える問題)、いくつか絵をみてストーリーを話す問題、問いに対して図表などに沿って答える問題となっています。

まだパイロット段階なので、最終的なスピーキングテストがどのような形になるかはわかりません。でもやはり、CEFR準拠のテストだけあって、ビジネス英語スピーキンテストPROGOSのように実際に起こるコミュニケーションのワンシーンを切り取ったような設問になりそうです。

 

日本が参加したときのインパクト

 

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「世界各国の15歳の英語力がCEFRで比較できる」

 

もし日本もこのPISAの英語力調査に2025年から参加することになったら、どんなインパクトがあるでしょう?現在の読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野でもランキングの上下が取り沙汰されるので、おそらく英語力の結果でも相当注目が集まるでしょう。現在のCEFRCEFR-J)に基づく学習指導要領の効果を見たり、他国の英語教育と比較したり、いろいろな活用が考えられます。

 

文部科学省も国内で定期的に「英語教育実施状況調査」(vi)を実施しており、令和元年の資料によると、CEFR A2レベル相当以上の英語力を有すると思われる高校生の割合が全高校生の30.4%となっています。同じく中学生ではCEFR A1レベル相当以上が44%となっています。PISA15歳の英語レベルは他の国と比べてどのくらいになるのか興味深々ですね。

 

振り返って、ビジネスパーソンのスピーキング力はどのくらいでしょうか?ビジネス英語スピーキングテストPROGOSの一部調査では、CEFRA2の人は受験者にかなり多く、これは高校生と同じくらいとも言えます。

 

2025年以降もPISAの英語テストが続くとすると、学力やスキルを測るテストが、逆に語学教育・学習方法に影響を与えるという、いわゆるウォッシュバック効果がある程度働くと予想されます。そうなると、15位に落ちた読解力についての強化が叫ばれるのと同じように、英語力とくにスピーキング力の強化策がとられるかもしれません。

 

PISAでの英語テスト導入を機に、一般的に日本人が苦手とするスピーキング力についての関心が一層高まるのではないでしょうか?

 

この10年くらい、英語4技能をバランスよく身に着けることの重要性が認識されてきました。4技能のなかでも低いとされるスピーキング力については、CEFR準拠のスピーキングテストで、世界における立ち位置を確認していくことは、4技能のバランスにむけた大きな一歩となると思われます。

 

実際、ビジネスでもスピーキングテストを全社的に導入して、英語力基準をCEFRに変えつつある企業が増えています。

 

今、教育を受けている次世代が就職活動を行うころには、CEFR準拠のスピーキングテストが、就職活動の英語力基準になっているかもしれません。

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脚注

 i:https://www.oecd.org/pisa/

 ii:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/1344324.htm

 iii:https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01_point.pdf

 iv:https://www.oecd.org/pisa/foreign-language/

 v:https://www.oecd.org/pisa/foreign-language/PISA-2025-FLA-Framework.pdf

 vi:https://www.mext.go.jp/content/20200715-mxt_kyoiku01-000008761_2.pdf

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