よい仕事をしたいというエンジニアの熱意は世界共通

株式会社マネーフォワード

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「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションのもと、マネーフォワードは、エンジニア組織の英語化を機に多様な人材の活躍機会を拡大し、情報流通のスピードを高め、AIエージェントによるサービスへと進化を図っています。
CTOの目線からみた事業戦略実現を支えるエンジニア組織の在り方と今後の展望を伺いました。

お話をうかがった方

株式会社マネーフォワード
取締役執行役員
グループCTO
中出匠哉様

 

聞き手
株式会社プロゴス取締役会長
安藤益代

目的

  • 事業スピードを阻害しないエンジニア組織づくり
  • 多国籍メンバーが働きやすい社内環境づくり
  • 日本人エンジニアの英語力の底上げ

アプローチ

  • エンジニア組織の英語化による海外人財の活用
  • “英語前提”の業務運用ルールの設定と定着
  • 勤務時間中の最大3時間までの英語学習許可や英語力ゴールの設定

成果

  • 候補者母数が約10倍に拡大。採用基準向上
  • 情報量や意見交換の場の拡大
  • 4年でほぼ全員がレベル達成。スピーキング力はCEFRでB1以上

AIエージェントでバックオフィス業務を限りなくゼロに近づける事業戦略

プロゴス社:
グローバル化というと海外進出をする企業が多い中で、貴社は国内事業の優位性を作るために海外人財を活用するグローバル化で成功されています。まず、貴社がどんな事業戦略を描いているのか教えていただけますか?

 

中出様:
マネーフォワードの祖業は、家計簿アプリの『マネーフォワード ME』ですが、現在は会計ソフトをはじめとする法人向けのバックオフィスサービスが事業の柱となっています。バックオフィス機能はどの会社にもありますが、複雑なバックオフィス業務から無駄な作業をなくし、クラウド化による業務効率化を支援することで、働く人がもっとワクワクするような、クリエイティブな仕事に集中できる環境づくりをサポートしています。

さらに、これからは、AIエージェントによる業務の自動化・自律化を目指します。つまり、人が担うバックオフィス業務を大幅に効率化し、付加価値の高い仕事に集中できるようにするサービスを展開する予定です。たとえば、これまで出張の経費精算などは自分でしなければいけないものでしたが、AIエージェントに領収書の写真を渡しておけば、人の代わりに精算処理がおこなわれ、あとは人が承認するだけという状態にできます。そうなれば、人はもっと本業にフォーカスする時間をつくることができるといった世界観です。

 

プロゴス社:
そうすると働く人の仕事に対する考えも、がらっと変わりそうです。御社が取り組む事業のスコープは、まさに仕事そのものの変革とも言えますね。

事業の急成長のボトルネックにならないエンジニア組織をつくる

プロゴス社:
貴社はM&Aも含め事業領域をものすごい勢いで広げてこられましたが、それを技術面で支えるのは並大抵のことではなかっただろうと想像します。事業の急成長に伴い、エンジニア組織として、どんなことを心がけてこられたのでしょうか?

 

中出様:
私が入社したころは、全社員60名のうちエンジニアが20名程度でした。今では連結社員数2,800人、うちエンジニアが約1,000人いて、エンジニア組織は50倍に拡大したわけです。その過程で、会社がこれをやりたいあれをやりたいというときに、ボトルネックにならないようなエンジニア組織を作ることが自分のミッションだと考えてきました。ですから、どうすればより優秀なエンジニアに入社してもらえるかをずっと模索してきました。

 

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英語化によるゲームチェンジで人材プールが10倍に

プロゴス社:
その過程で、英語化に振り切ったきっかけが何かあったのですか?

 

中出様:
初期の頃は、東京本社だけで開発をおこない、採用も中途だけでしたが、新卒採用や地方拠点にも開発機能をつくるなどして間口を広げていきました。2019年にはベトナムにも開発拠点を作りました。

外国籍エンジニアの採用を始めた頃は、日本語が話せる人材だけを採用していましたが、需要に対して供給が追い付いていない状況を打破するためにも日本語要件を撤廃する必要があると感じ、2021年にエンジニア組織の英語化を決定しました。

ベトナム拠点をつくるときに現地をまわっていて気づいたのですが、日本の文化やサブカルチャーが好きな人が多いのです。でも日本語というバリアが強すぎて、日本で生活するのはかなわないと諦めている方も多いのではないかと。逆にこれは、言葉の壁さえなければ日本に来て働きたいと思ってくれる人がたくさんいるということに気づき、待つのではなく仕掛けていくことにしました。

まさに、エンジニア組織の英語化はゲームチェンジだったと思います。

 

現在では外国籍の新卒採用にも力を入れていて、海外の大学に出向いてキャンパスリクルーティングに参加し、ベトナムやインドをはじめとする学生を採用しています。キャンパスリクルーティングは、例えばマイクロソフトなどといったグローバル企業と同じ舞台で採用しています。インドのIIT(インド工科大学)では、どの会社がいくらでオファーしたかが地元メディアの記事になるくらい注目されるイベントです。

現地の学生にしてみれば、英語ができるので働ける国のチョイスは多くありますが、英語化によって私たちもその土俵で学生に選んでもらえるようになったわけです。

 

プロゴス社:
英語化によって、実際にどのくらい応募者数、採用数は増えたのでしょうか?

 

中出様:
採用のチャンスが桁違いに広がりましたね。体感として約10倍くらいになりました。候補者の母数が増えたことにより、より優秀な人材を採用するべく、採用条件のハードルを上げることもできました。

日本人エンジニアの採用面でも、グローバルな環境で経験を積めるという点は魅力的に捉えられていて、人気が高まったという副次的効果もありました。

 

mf_001マネーフォワード社の開発拠点一覧
海外はベトナム(ハノイ、ホーチミン)、インドに拠点がある

 

社内の日本人への英語のサポートにコミットする

プロゴス社:
英語化については、スピーディーに意思決定されたようにお見受けしますが、社内の調整はどうされたのですか?

 

中出様:
英語化を推進すると決めたうえで、バックキャストで段階的な調整や制度づくりを検討していきました。エンジニア部門では、すでにベトナムで開発をやっていましたし、国内でも優秀な外国籍のエンジニアがよい仕事をしてくれていたので、自然な流れでした。でもエンジニア以外の部門が英語化により仕事がしにくくなる状況はつくりたくなかったので、バイリンガル併記や同時通訳の体制を整備しました。その結果「一時的な混乱はあったとしても、会社全体としてプラスだよね」というコンセンサスができたと思います。

 

プロゴス社:
さきほど貴社の来客用スペースでも英語が自然に飛び交っているのを拝見しました。エンジニア部門で実際にどんなふうに英語で仕事をしているのでしょうか?

 

中出様:
テキストコミュニケーションは基本的にすべて英語ですし、職場では英語の会話が溢れています。会話するときに外国籍の方が一人でもはいっていれば英語です。

日本人のエンジニアにとって英語力を身につけるのは将来のキャリアにおける選択肢が増えるというメリットもあります。会社としても英語力向上にコミットして、以前おこなっていた英語研修では、勤務時間中に最大3時間まで英語学習に使っていいという制度を設けました。平均でも皆さん1〜2時間は勉強していたと思います。英語学習しながら業務もおこなう点ではメンバーには負担をかけましたが、しっかりと環境を整えれば、自発的に学び、成長していけると実感しました。

エンジニアが「よいものづくりをしたい」という気持ちは日本も世界も共通です。国籍にかかわらず、世界各国から優秀なメンバーが集まり、英語でコミュニケーションとることで、情報量も意見交換の場も広がり、よりよい仕事ができるという考えを皆持っていると思います。

 

英語化に取り組み始めて4年くらいになりますが、今では、TOEIC700点以上の人が95%を超え、英語で仕事をおこなう環境を作ることができました。また、スピーキング力の目標はCEFRでB1以上と最初から設定しました。私自身もPROGOSテストを受けています。

英語化をおこなった楽天さんなどの例を見て、仕事で英語を使う環境さえできてしまえば、社員の英語力は仕事を通してでも自然にあがっていくと期待しています。

世界中の誰にでも同じチャンスが与えられる組織にむけて

プロゴス社:

エンジニア組織が大きくなり、多様な社員で構成されるようになったわけですが、組織運営で大切にされていることは何でしょうか?

 

中出様:
もともと「日本人でないとできない仕事」や「日本人同士なら通用するようなコミュニケーション」はなくしたいという思いがありました。世界中から集まってきた才能あるメンバーに平等にチャンスを与えられるように、アジャストするように心掛けています。

現在、エンジニア部門での外国籍社員の割合は半数以上となり、多様なメンバーが活躍しています。マネジャー職における外国籍社員の割合も増えてきていて、上司が外国人というチームもあたりまえになってきています。マネジャーとして優れた力を発揮している外国籍社員もいます。

育成面では、グローバルに受け入れられるマネジメントを前提に、リーダー研修などの機会を広げています。ただ、外国籍社員の増加の割合が想像以上に速いので、まだキャッチアップすべきことも多いと思います。

 

プロゴス社:
外国籍の社員はリテンションが難しいという企業もありますが、貴社ではいかがでしょうか?

 

中出様:
国籍を問わず平等に機会を提供してくれる会社と信じることができ、実際に会社もそのような体験を提供できれば、長く在籍してくれるものだと思います。

視点を変えて見ると、単身で外国に来て働くのは大変なことです。でもそれを乗り越えてきているので、多くのメンバーが高い適応力や主体性を発揮している側面もあるのだと感じます。おかげさまで「日本の会社だけど外国籍社員でもちゃんと活躍できる」という口コミが広がっているようです。

 

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マネーフォワードで活躍するグローバルメンバー

CTOの役割は、先を考え、グローバルにフラットなチームを作ること

プロゴス社:

最近、CTO協会の理事にも就任されましたが、グローバル化が加速するなかでのCTOの役割をどうお考えですか?

 

中出様:

CTOが何をすべきかは、会社やステージによって違うと思いますが、よいものづくりをどうしたらできるか、会社のどんな課題を解決すべきかを考えるという役割は一貫しています。とくにCTOは、中長期、例えば3,4年先にどうあるべきかを先回りをして考えなければいけないと思っています。

日々の業務時間で考える時間をつくるのは困難なので、2~3週間に一度コーチングをうけて自分の考えを壁打ちしています。誰かとしゃべることでアイデアが整理でき、刺激してもらうことで考えが進むように感じます。

 

プロゴス社:
海外の拠点にもよくいらっしゃるのですか?

 

中出様:
半年に一度は現地に来てほしいと言われており、行ったときはメンバーとの1on1やディスカッションを実施しています。私たちは海外拠点をオフショアと捉えておらずフラットに、一緒のチームとして、どんな組織にしたいかを話しています。

よいものを作って提供したい気持ちは世界共通

プロゴス社:

将来的に、日本国内のサービス提供だけでなく、グローバル市場でのビジネス展開を視野にいれられていますか?

 

中出様:
いつか海外も含めてサービスをグローバルに展開したいとは思っています。タイミングをみて、世界中で使ってもらえるサービスを提供したいです。外国籍の社員も、「いつか自分の出身国でも、マネーフォワードのサービスを展開したい」という思いを持っているメンバーは多いですね。

UserFocusで、よいものを作って提供したいという気持ちは、言葉や文化を越えてエンジニアに共通している想いであり、それを大切にしていきたいですね。

 

プロゴス社:
英語化のずっと先にある貴社のビジョンは、多くの国のエンジニアの心に響くものと確信します。どうもありがとうございました。

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株式会社マネーフォワード

https://moneyforward.com/

2012年5月に設立。「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションを掲げ、すべてのお金の課題解決を目指すSaaS/Fintech企業。個人向けお金の見える化サービス『マネーフォワード ME』や事業者向けバックオフィスSaaS『マネーフォワード クラウド』など、60を超える多様なサービスを提供している。

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