2035年のありたい姿にむかって
プロゴス社:貴社は、冷凍食品などの加工食品事業、低温物流事業、水産・畜産事業など幅広い事業を展開していらっしゃいますが、今後に向けてどのような中長期の成長戦略を描いていますか?
齋藤様:当社では、今年度、長期経営目標「N-FIT2035」(Nichirei Future Innovative Tactics 2035)を新たに策定しました。
「食を通じての卓越した価値創造」と「高度な物流サービスから生み出される革新的なソリューション」をとおして、世界の人々の豊かな食生活と健康を支え続ける企業でありたいと考えています。
とくにグローバル市場に重点をおき、海外事業拡大スピードの加速とグローバル経営基盤の強化を通して、海外売上比率を2024年度の23.6%から2035年には40%に高めるという、数値目標を掲げました。
「新長期経営目標N-FIT(Nichirei Future Innovative Tactics)2035」より
マインドを持っている人を増やす
プロゴス社:この数値目標にむけて、改めてギアチェンジが必要になりますね。これを実現するために、人財面でどんなことが求められますか?
齋藤様:人事としては、海外事業の成長を加速させるために、事業の推進と管理を担う人財の確保が重要ミッションと捉え、いろいろな施策を推進しています。
プロゴス社:人財の確保のための施策について、ぜひお聞かせください。
齋藤様:まず、将来の海外駐在員候補の母集団形成が必要だと考えています。
そのために重視しているのは、成長意欲とグローバルで活躍してみたいというマインドを持っている人を増やすことです。
最初のステップとして、興味を喚起することから着手します。苦労したけど、こんなことが楽しかった、うまくいったなど赴任経験者の成功体験を発信していく予定です。そうすると、意外とそんなに難しくないのかとハードルが下がっていくことも考えられます。また、キャリア申告のときにアンケートでグローバルな仕事への関心について聞いてみることも行っています。
プロゴス社:グループ共通の人財要件のようなものはあるのでしょうか?
齋藤様:人財要件としては「英会話力」「異文化への関心・理解」「逆境を乗り越えることのできるチャレンジ精神・行動力」等を要件としています。
中でも「英会話力」はベースとなるスキルとして、育成を強化しています。ニチレイグループでも様々な事業が様々な地域で事業展開をしていますが、コミュニケーションは英語で行われるケースも多いため、英会話力は必須です。
グループ共通の必須スキル:英会話力
プロゴス社:食品加工や低温物流など幅広い事業を海外展開されていますが、やはり英語コミュニケーション力は共通して必要なのですね。具体的には、どんな育成策をとっていらっしゃいますか?
菅野様:英語学習は、個人にあった能力向上が大切であると考えておりますので、学習コンテンツはインプット型、アウトプット型とバリエーションを用意しています。
アウトプット型としてレアジョブ英会話を導入しており、コース(日常英会話、ビジネス英会話)は個人のレベルに応じて選択してもらっています。昨年度の受講後アンケートでは、満足度約95%、継続意欲約80%となっており、社員からも好評です。
学習機会の提供方法としては、選抜型と公募型があります。特に公募型は本人のチャレンジ精神のもとで学習しますので、半年間という期間でもしっかりスキルアップできる社員が多いです。社員のモチベーションを維持、向上させる働きかけを今後も検討していきたいと思います。
学習とテストの絶妙な組み合わせ
プロゴス社:皆さんかなり熱心に取り組んでいらっしゃるのですね。それには何か秘策があるのですか?
菅野様:選抜型・公募型研修では、英会話を学習する社員全員にスピーキングテストを必須でうけてもらっています。テストで英会話力が可視化されるので、学習のゴールをPROGOSテストのCEFRレベルとして定めて、多くの人がスキルアップを実現しています。
プロゴス社:なぜPROGOSテストを英語研修で使おうと思われたのですか?
齋藤様:従来は語学研修の効果測定をTOEICⓇ L&Rのみで実施してきました。しかし、TOEICスコアが高くても、実際に英会話ができるかといえば、そうでもない人もたくさんいます。そこで英会話力を測るならスピーキングテストがいいと思いPROGOSを導入しました。あと、国際的指標のCFERに基づいているという客観性がとても分かりやすかったのが、決め手の一つでした。
プロゴス社:導入にあたって、何か工夫したことはありますか?
菅野様:運用上の工夫としては、半年間の学習期間で3回受験できる機会を提供しているということでしょう。事前、事後だけだとどうしても期間が空いてしまうので、中間地点でも受験するようにしています。また、そのタイミングに合わせて、PROGOSテストの結果の見方、次のアクションを考えるようなウェビナーをセットで開催しています。そうすることで、学習意欲の醸成を狙っています。
そのこともあって、公募型学習の一つとして提供しているレアジョブ英会話も、世間の平均よりも多くのレッスン回数をこなし、PROGOSのレベルもあがる人が多いです。こんな風にテストとうまく組み合わせて、もっと英会話参加者を増やし、レッスン利用回数も増やしていきたいですね。
データとしてのテスト結果活用の広がり
プロゴス社:皆さん、自律的に学習にとりくんでおられるのですね。ほかにも、PROGOSテストの結果の活用について考えていらっしゃることはありますか?
菅野様:成果がでた社員へのインタビュー記事を社内で公開するなどして「自分も挑戦してみよう」という学習意欲の向上に繋がる仕組みを作りたいと思っています。
さらに、PROGOSで測定したスピーキングレベルを人財マネジメントシステムに記録することで、グローバルの人財配置や育成計画での活用、データに基づいた戦略的なタレントマネジメントの基盤としての活用も検討していきたいです。
英会話力で人財価値をあげる
プロゴス社:今後のグローバル人財育成にむけた抱負をお願いします。
齋藤様:ニチレイグループは今後も海外展開を加速していきます。そのためには社員の英会話力向上の必要性は高まっていくと考えます。現在、業務で英語を使用しない人にとっても、使用する時がくる可能性もありますし、そもそも個人としての能力を高めることにも繋がります。社員一人ひとりが自分ごとと考えて、当たり前に学び習得していくということを実現していきたいです。
それを実現するためにも社員に向けたPRを強化していきます。また、貴社はコンテンツ提供だけでなく、学習効果を高めるための社内ウェビナーも実施されています。継続学習のコツ等について、弊社の実情を加味した上でオリジナルのウェビナーも引き続き企画していきたいと考えています。
英会話力という基盤が整うことで、あとの2つのスキル要件である、「異文化への関心・理解」「逆境を乗り越えることのできるチャレンジ精神・行動力」の習得も加速していくと思います。
プロゴス社:このような人事の働きかけによって、グローバル化をけん引する母集団が作り上げられていくのですね。貴重なお話をどうもありがとうございました。