よりグローバルでダイナミックな経営へ
プロゴス社:貴社では、中期経営計画2026に基づき、ものすごいスピードでグローバル一体経営に移行されているとお見受けします。その中核となる経営方針 Global Integrated Enterprise(GIE)とは、どんなものなのでしょうか。
石井様:これまでのアシックスは、各地域がそれぞれの市場特性に応じた経営判断を行う「地域別最適化」の体制を取ってきました。しかし、グローバル競争が激化するなか、各国・地域の枠を超えた価値創出を実現していくうえで、「本社と各地域を有機的につなぐ経営体制」が益々不可欠になってきています。
これまでは本社と地域子会社がそれぞれの成果にフォーカスしていましたが、今後はグローバル視点での戦略的な連携を推進し、地域ごとではなくグループ全体に対して、それぞれがどのように貢献できるかという視点が各拠点に対し求められます。GIEは、グループ全体でよりバリューを高めていくことを目指しています。
グローバル一体経営がもたらす社員の変化
プロゴス社:GIEはアシックス様の現在の経営方針を強く表すキーワードだと感じております。グローバル最適に向けて、短期間でかなりの組織変革をされていらっしゃいます。それによって、社内の組織や社員には、具体的にどのような変化が起きていますか?
石井様:GIEの推進に伴い、すでに社内ではさまざまな変化が起きています。上のレイヤーから申し上げますと、近年では経営会議の使用言語は英語となり、資料も全て英語で作成しています。また、海外Regionの役員が本社経営メンバーとして加わるなど、組織構成そのものがグローバルに変化しています。実際に人事部にも海外メンバーがマネジャーとして着任しています。これに伴い、現場でも「外国人の上司や同僚と働く」「英語で会議をすること」が日常となりつつあります。
大きな変化としては、発想が日本ではなくグローバル起点になっているという点ですね。「グローバルの中で、日本Regionはどうあるべきか?」「アシックスとして、グローバルにお客様に価値を届けられる会社になるために変革していこう」というように、議論の前提がグローバルになっているんです。
プロゴス社:すでに、さまざまな意識の変化が起きているのですね。では、人財育成ご担当のお立場から、研修を通して、どのような社員の変化を感じていらっしゃいますか?
石井様:次世代のグローバル幹部候補人財を育成する選抜研修プログラムとして、ASICS Academyを実施しています。ASICS AcademyⅠがスタッフレベル、Ⅱ・Ⅲは管理職以上としています。管理職以上については、海外Regionの外国籍社員と日本人の合同実施で、研修も発表も全て英語で行っています。
プロゴス社:日本人と海外Regionの方との合同の幹部候補育成を通じて、日本人の参加者に何か変化がありましたか?
石井様:アウトプットの視野の広がりが違うと感じています。もちろん、日本人メンバーだからこそ発想できるものもありますが。例えばヨーロッパのメンバーがそこにジョインすることで、違う観点のダイバーシティについて議論に入ってくれたり、ステレオタイプを壊してくれています。そういったことを通して、お互いのシナジーを生み出すので、研修参加者に「他のRegionの方とこういった交流ができることにバリューがある」と仰っていただくことも多いです。「欧州・中国など多様な文化的背景を持つメンバーとの意見交換を通じて、視野が広がった」という声も多く聞かれます。非常に良い変化が起きているなというのが実感です。
GIEで求められる人財像とは
プロゴス社:GIEが求める理想的な人財像と、日本人の社員が強化すべきスキルや、もつべきマインドについてお聞かせください。また、キャリア初期の若手と、ミッドキャリア以上の社員に求めるスキル・マインドには、どのような違いがあるのでしょうか?
石井様:私たちは、グローバル共通で全社員に共通するコンピテンシーを定め、それに照らして育成や評価を行っています。グローバル環境で成果を出せる人財には、コンピテンシーが大前提の土台とはなりますが、以下の3点が不可欠だと考えます。
1. アシックスのミッション・ビジョンに共感し、自律的に体現できる
2. グローバルでのビジネスに対応できる柔軟なマインドとコミュニケーションスキル
3. 多様なデジタルツールを使いこなしながら、より大きな成果を成し遂げることができる
若手に求めるのは、自律的にキャリアを形成する力、異文化を柔軟に受け入れる姿勢です。直近、選考を受けていただく学生さんの中には「グローバルに活躍したい」という思いを持つ方も増えています。今後は、若手社員を対象とした短期の海外実務研修プログラムを開始し、グローバルビジネスを肌で感じていただく機会を作り、より早期からのグローバルリーダー育成にも取り組んでいきます。
一方、ミッドキャリア層には、多文化チームを率いるマネジメントスキル、グローバル目線での戦略的思考が求められます。責任の所在を明確にすること、価値観の違いを乗り越える力など、日本的なスタイルに固執しない柔軟性も重視しています。
GIEの共通言語、英語コミュニケーションのスキル
プロゴス社:上記に基づいて、社員の皆様が習得すべきスキルや具体的な能力についてお聞かせください。
石井様:まずは、共通言語としての英語力ですね。これについて我々が支持させていただいているのが、「国際指標であるCEFR」です。ビジネスの場にいる我々にとって「実際に使えるかどうか」が重要だと考えるからです。
プロゴス社:アシックス様には、昨年1年間、全社員様向けにPROGOSを展開いただきました。石井様ご自身にもご受験いただきましたが、いかがでしたか?
石井様:あのスピード感と精度で、30分あれば、現在地がわかるという点が素晴らしいと思いました。英語学習の最初の一歩は緊張するものですが、PROGOSはAI相手なので「間違えても恥ずかしくない」という心理的なハードルの低さも魅力です。
多忙な社員にとって、今の自分の実力を即座に把握でき、学習のPDCAを素早く回すことができるのは、大きなメリットです。テストの結果を見て、どこを改善すればいいかを意識して、英会話レッスン等を受ける、というふうに、テストから学習に繋がる動きが具体的にできていると感じます。PROGOSをきっかけに、「レアジョブ英会話」などの英語学習を自発的に始める人数も実際に増えてきています。
プロゴス:自ら英語学習を始められる人数が増えているとは、まさにGIEに向けて社員様の姿勢の変化を感じますね。では、英語コミュニケーション力以外のスキルについては、いかがでしょうか?
どこでも通用するグローバルコンピテンシー
石井様:今後さらにGIEを進めていく上で、英語力はあくまで「成果を生むためのスキル」と捉えています。本当に目指すのは、どの国・地域に行っても価値を発揮できる「グローバルコンピテンシー」です。
そのために、マネジメントスキルや異文化理解力、多様性を尊重するマインドといった “基盤力” の強化に力を入れています。具体的には、1on1コーチングやマネジメント研修を毎年実施しており、変化の時代に対応できる柔軟なリーダーが育つ土壌を整えています。
また、社員一人ひとりがキャリアを自律的に形成していけるよう、DE&Iやキャリア支援、エンゲージメントに特化した専門組織も立ち上げました。自ら学び、成長し、世界で活躍する。すべての社員が自発的に、積極的に挑戦でき、グローバル人財として活躍していけるよう、マインド面やスキル面など多面的に支援できる体制構築を進めています。
世界に価値を届け続けるために
プロゴス社:最後に、アシックス様としての抱負を教えていただけますでしょうか?
石井様:アシックスは、創業当初からグローバルを見据えて挑戦し続けてきたブランドです。これからも「世界に価値を届ける」企業であり続けます。
そして、そのビジョンを実現するための基盤は “人” です。
その人財をどう育てるか、そこに英語力の強化や、異文化への理解、グローバルな視点が必要であることは言うまでもありません。私たちは、PROGOSをはじめとしたさまざまなツールを活用しながら、未来を支えるグローバル人財の育成に、これからも取り組んでいきます。
プロゴス社:貴重なお話をありがとうございました。GIEによるアシックス様の飛躍に、これからも微力ながらお力になれれば幸いです。