コラム | 株式会社プロゴス

【イベントレポート】経営と人事を「点」から「線」へ繋ぐ変革—大手企業HRリーダーが本音で語り合った「アラインメント」のリアルと突破口—第2回

作成者: PROGOSアプリ事務局|Nov 4, 2026, 11:33:53 AM

経営と人事のアラインメントをテーマにした変革コミュニティ『HR Change Agents Dinner』のイベントレポート、第1夜からの続編となります。

前編(第1夜)では、日立システムズ様、アシックスジャパン様、大手環境プラント分野、日本航空様のHR・事業リーダーをお迎えし、講師の吉田洋介 氏(人事図書館 館長)とファシリテーターの木下祐一(経営コンサルタント)とともに、「経営戦略と現場の断絶」や「ツール導入におけるマインドの乖離」といった共通の壁について熱い議論を深めました。

 

今回の「第2夜」では、さらに一歩踏み込み、130年を超える歴史を持つ伝統企業や、大手製造・製薬企業の部課長・リーダー層が集結。「歴史ある企業の非合理的な風土」「精緻すぎて現場が使いこなせない制度の歪み」「形骸化するジョブ型」など、より生々しい組織の課題に対する本音の壁打ちと、相互の具体的な改善アプローチの模様をお届けします。

 

【第2夜】歴史ある企業の「非合理性」と「制度の歪み」を経営戦略に繋ぐ

第2夜では、歴史ある伝統企業の部課長層が集まり、ファシリテーターの木下氏から「海外経営の現場では『優秀な人に倍払って成果を出さない人を減らす』のが当たり前だった。日本の優しさと経営アラインのバランスをどう取るか」という揺さぶりから議論が深まりました。

課題①【歴史ある伝統企業の「非合理的風土」と経営の動かし方】

  • 現状と悩み(ニップン 人事 部長):

130年の歴史を持つからこそ、非合理的・非効率な組織構造や強い成功体験の慣性が働いており、単なるロジックや正論では経営や現場が動かない。

  • 相互の改善案&持ち帰り(ニップン 人事 部長・吉田館長・木下氏):
  • 非合理的対話の活用(ニップン 人事 部長・木下氏):

正論や論理(ロジック)だけでは動かない歴史ある組織に対しては、あえて泥臭い人間的な対話を重ねて一人ひとりの信頼を得ながら、変革に向けた人事側の熱量や意図を根気強く伝えていくアプローチが有効であると共有されました。

  • 伝統企業の強みの再解釈(吉田館長):

伝統企業特有の「風通しの良さ(何を発言しても許される懐の深さ)」や組織の温かみを維持しつつ、必要なポイント(51対49の絶妙な塩梅)でアラインメントを仕掛ける手法が提示されました。

 

課題②【精緻すぎる制度と、経営・現場との解離】

  • 現状と悩み(大手総合印刷会社:キャリア開発担当部長):

人事は精緻で複雑な制度を作りたがるが、経営層や現場から見ると投資対効果が見えにくく、「分かった気になっているように見えるが実はスルーされがち」になる。

  • 相互の改善案&持ち帰り(大手総合印刷会社:キャリア開発担当部長・大手電機メーカー人事グループ長・吉田館長):
  • 「フィット(大衆車)」のような使いやすい制度へ(大手総合印刷会社:キャリア開発担当部長・大手電機メーカー人事グループ長):

一部の限られた人しか扱えない複雑で過剰な制度(高級スポーツカー)を目指すのではなく、現場の誰もが迷わず運用でき、100%の性能を発揮できるシンプルで実効性の高い制度(大衆車)へチューニングしていく重要性が語られました。

  • 評価工数の削減(木下氏・吉田館長):

全社で換算すると数万時間もかかる目標管理の工数をAI等も活用しながら極限まで減らし、本来の営業や事業活動に時間を再投資させていくことこそが、経営戦略と人事施策を「線」で繋ぐ重要な一歩になるという深い共感が得られました。


課題③【ルールの番人となっている高コスト層と構造改革】

  • 現状と悩み(大手電機メーカー・人事グループ長):

過去の国内シェアに甘んじ、人事がルールの番人となっている高コスト層が、イノベーションや若手の挑戦を阻んでいる。

  • 相互の改善案&持ち帰り(大手電機メーカー人事グループ長・木下氏・総合商社グループ物流企業:人事部 リーダー):
  • エビデンスに基づく自律的転進(大手電機メーカー人事グループ長実践):

無駄な業務や外注を全廃し、早期退職のメリット・デメリットを丁寧にエビデンスとして示して人員適正化を断行した事例が共有されました。

  • 経営者の覚悟と降格・ポジション管理(木下氏):

早期抜擢を行う際は、上が詰まらないよう経営層が覚悟を持ってポジションの降格や入れ替えをルール化することが不可欠であると提示されました。


課題④【ジョブ型先行による現場の形骸化と混乱】

  • 現状と悩み(大手製薬メーカー):

ジョブ型制度が先行し、ジョブディスクリプション(JD)が未完成なため、社員もマネージャーも「何をすれば評価・昇格されるのか」分からず混乱している。

  • 相互の改善案&持ち帰り(木下氏・大手総合印刷会社:キャリア開発担当部長・吉田館長):
  • 部門長・経営陣自らがJDを言語化する(木下氏):

人事部に丸投げしても実効性のあるJDは作れない。木下氏が過去に海外子会社(1,200名)の社長時代に全職種のマトリックスJDを短期間で自ら作成した実体験の通り、数字と作業を握っている部門長・経営陣が自ら泥臭く言語化すべきであるとの強力なアドバイスが送られました。

  • 自社風ハイブリッドとしての説明責任(大手総合印刷会社:キャリア開発担当部長・吉田館長):

直輸入のジョブ型に固執せず自社に合った「自社風ハイブリッド制度」として割り切り、人事は「なぜこの変化が必要なのか」を逃げずに説明し切る重要性が提示されました。

懇親会セッション:経営と人事を「線」で繋ぐための本音議論

第2部として行われた懇親会では、お酒も交えながら「経営戦略と人事を繋ぐためのより深い本音」が語られました。

 

【誤解された「心理的安全性」の再定義】

  • 「心理的安全性=耳の痛いことを言わないぬるま湯」という誤解を払拭する。本来は「事業成果を出すために厳しい意見や指導も安心して行え、互いに成長できる環境」であり、人事は管理職が逃げずに正しく指導できるようサポートすべきである。

【AI時代のマネジメントと人間の本質(0→1)】

  • 吉田館長より「AIへのプロンプトの出し方には、その人の日頃のマネジメントスタイル(部下への情報共有や丸投げ体質)がそのまま映し出される」という知見が共有されました。
  • AIが1〜99の作業をこなす時代だからこそ、人間の役割は「0から1の意志・問いを立てること」に絞られる。人事は社員が「何のために働くのか(Why)」という熱量を持てる環境づくりに注力すべきだと締めくくられました。

 

 

まとめ:自社の課題を持ち寄り、壁打ちし合える場として(次回11月へ)

2日間にわたるセッションを通じて明確になったのは、どの企業においても「経営戦略と人事施策が点として分断されていることへの危機感」と、それを自らの手で「縦書きの一貫したストーリー(線)へ繋ぎ直そうとするプロ人事・変革リーダーたちの強い意志」でした。

 

本コミュニティ『HR Change Agents』は、今後「2ヶ月に1回(11月・1月・3月)程度」のサイクルで継続開催してまいります。

次回(12月予定)からは、参加者が本日も話題に上った、自社のリアルな課題と解決試案を持ち寄り、1回2組ずつ登壇して全員で徹底的に「壁打ち」を行う実践セッションへと進化します。参加者同士で壁打ちをしながら解決案を見出す中、事務局側の知見とネットワークを駆使しながら情報提供を行い、自社で実行できる「組織変革アクションプラン」の完成までプロデュースいたします。

 

「経営戦略と一貫性のある人事ストーリーを作りたい」「自社の人事・組織変革を自発的に推進したい」とお考えの人事責任者・部課長様、ぜひ次回の取り組みにご期待ください。

 

←前編第1夜の内容はこちら!!