【セミナーレポート】なぜあの企業は英語評価基準を〇〇〇に変えたのか?ノウハウ紹介セミナー

2021.08.18

 

「CEFR」という語学能力を測る指標をご存じでしょうか?

 

これまで多くの企業が「社員の英語スピーキング力」という

グローバル化推進の入口でつまずいてきました。

グローバル化の重要性を認識できているにもかかわらず、なぜ入口でつまずき、推進していくことができなかったのでしょうか?

そのヒントは「CEFR」にありました。

その理由と解決法につきまして、6月21日に開催いたしました「なぜあの企業は英語評価基準を〇〇〇に変えたのか?ノウハウ紹介セミナー」において、
・CEFR研究の第一人者 東京外国語大学 教授 投野由紀夫氏
・英語公用語化を成功させたHENNGE株式会社 執行役員 汾陽祥太氏
をゲストにお呼びし、セミナーを開催いたしました。

お二人に徹底解説いただいきました講演内容をレポートさせていただきます。

気鋭の研究者が解説する、企業における世界標準CEFR, CEFR-Jの活用メリット

 

<登壇者>

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投野 由紀夫 氏

東京外国語大学

大学院教授
ワールド・ランゲージ・センター長

 

CEFRは新しい外国語能力の基準として世界中で広まり、日本でも認知度が上がっています。実生活での運用能力を重視するCEFRCEFR-Jを使って企業で必要な英語能力を可視化すれば、英語学習をより効率のよいものにすることができます。さらに英語研修の評価をCEFRに照らしあわせると、社員が英語で何ができて何ができないかが見えてくるので、社員の英語研修のPDCAを回していくことができます。とくに日本人にとって中級の壁を突破することが喫緊の課題となっています。

 

1.CEFR, CEFR-Jとは何か?その世界・日本での影響は?

 

CEFRとは?

CEFRとは、Common European Framework of Reference for Languages (ヨーロッパ言語共通参照枠)の略です。2001年、欧州評議会で発表され、「EU圏内のすべての外国語教育の目標設定・シラバス構築・教材作成・指導と評価をみなこのCEFRを使って行いましょう」ということが議決され、使われ始めました。その後、ヨーロッパから徐々に世界に外国語教育の国際標準として影響力を拡大し、今や世界中の外国語教育のフレームワークとして利用されつつあります。また特に言語テストの世界で標準化が加速しており、世界中の言語テストがこのCEFRとの対応づけを行うことでまとまってきています。

 

CEFR-Jとは?

日本国内でこのCEFRの影響に早くから目を付けて、英語教育の分野でCEFRの適用を進めたのが CEFR-J です。これはCEFRに完全に準拠し、かつA1~B2までをよりスモールステップに細分化、さらにA1.1の前に Pre-A1 をつけて導入部分を緩やかなスロープにした、日本の英語教育に特化した枠組です。科学研究費で通算4期連続で大型プロジェクトの予算をとって、詳細なレベル分けをしたものに、オリジナルCAN-DOを作成、それを統計的に難易度を検証し、レベル別の語彙表、文法、テキストのプロファイル情報を整備・公開しました。さらに、CEFR本家のほうでも2020年版が出て、Pre-A1 が新設され、A2~B2にプラス・レベルが復活するなど、本家CEFRがCEFR-Jの影響を受けたかのような改訂が行われました。今ではCEFRとCEFR-Jは非常に似たレベル分けとなっています。

 

▼書籍紹介

 

【CEFRの基本がわかる】
CEFR-Jガイドブック

投野 由紀夫 (編)

【CEFR-Jテストがわかる】

CEFR-Jリソースブック

投野 由紀夫・根岸 雅史(編・著)

CEFR/CEFR-Jが定める英語力

CEFR/ CEFR-J は英語学習者を一人の英語ユーザーと考え、かつ、個々のユーザーが社会の成員(social agent)であると考えます。人は日々さまざまなタスクをこなしており、そのうち言葉を使って行うタスクには、それなりの目的があり、その目的を達成するために人は言葉を用いるのです。つまり、言葉を単なる「知識」としてとらえるのではなく、それを具体的な場面・状況・目的に応じて「使える力」=コンピテンスととらえています。この能力を記述した文がCAN-DOです。

 

この英語力があるかどうかを測るのは、知識や文法問題ではなく、例えば、話す力なら、実際に話させてみて評価するパフォーマンステストです。英語力は習熟段階に応じて力が限られていますが、その限られた英語力でストラテジーを駆使してコミュニケーションが成立できるようにする能力が「タスク遂行能力(Task Achievement)」です。これをCEFRではとても重視しています。

 

2.CEFR/CEFR-J準拠テストとTOEIC®L&Rなどとの違いは?

日本で大変人気のあるビジネスパーソン向けのテストはTOEC®L&Rです。これは米国の Educational Testing Service(ETS)が作成しているテストです。米国のテスト理論は言語能力の構成概念モデルを設定し、発音、語彙、文法、4技能などの小問をできるだけたくさん解かせて、その合計値で能力を推定します。1つ1つの問題を見ると必ずしも実際の生活のタスクと密接に関係するとは限りませんが、それらが多く集まると言語能力を適正に測れると考えます。TOEFL®, TOEIC® などはこの傾向が強いです。

一方、英国・ヨーロッパ系のテストは言葉を実際に使う場面・状況を想定し、できるだけ実場面に近いタスクを与えてことばの能力を総合的に見ようとします。今、日本の学校教育でもこの「実際にできるか」を見るパフォーマンステストという概念がどんどん入ってきています。こちらが、イギリス留学に必要な IELTS, Cambridge Exam などの系統で、PROGOS もCEFR準拠でこの系統に入ります。

今後、この英国・ヨーロッパ系のコミュニカティブな実生活に近いタスクで「実際にやらせてみて評価する」タイプのテストがどんどん普及していくと思います。

日本の企業ではTOEIC®L&Rが標準的な英語力指標として使われてきました。しかしTOEIC®L&R800点でも実際の場面で機能しないということが起きています。一方、グローバル企業では英語力評価を、共通レベルであるCEFRで行うところが増えてきています。

そういった意味でも自社の英語教育を、CEFR4技能に照らし合わせて一度見直してみるとよいかもしれません。日本の企業は、社員のTOEIC®LRの点数を上げることだけにまだフォーカスしているふしがありますが、社員が英語を使ってできる仕事を増やしていくことにも着目すべきでしょう。

3.CEFRで企業や社員の英語に対する取組みの何が変わる?

CEFRを使った研修体系の見直し

企業側が社員に目標をはっきり示せば、波及効果も大きくなります。具体的な目標をベースに勉強する方が、トレーニング効果が格段に高くなります。そういう目線でCEFRを積極的に活用してほしいと思います。英語のゴール設定や学習機会の提供、教材設計、レベルチェックといったすべての基準をCEFRベースにして見直してみてください。改善する点がないか、欠けている部分はないかをCEFRで見極めていく。これが最も典型的かつベストな使い方です。

 

■CEFR導入による学習者のマインドセットの変革

このとき、学習者のマインドセットの変革も、一緒に提案してあげられるといいと思います。与えられたトレーニングやコースを受け、言われたことだけをやっていく……。常に受け身で、レールの上を乗っかってさえいれば力がつくという幻想を打ち砕くのです。勉強は本来そういうものではないと企業側が言い続けるのは、大切なことです。

 

B1レベルに到達すると、学習者がある程度自分の英語能力を判断できるようになり、個人的な目標を自発的に設定できるようになります。加えて、目標達成の実現に向けての勉強法も1人で計画できる力がついてきます。こういった学習者は「自律的な学習者」と呼ばれます。自律的な学習者が増えていけば、企業の英語研修は学習のための時間や場所、リソースの提供や、学習の相談に乗れるアドバイザーの配置といったものに変わっていくでしょう。

 

▼参考:一般的にビジネスで英語を使用する際に求められるレベル

求められる英語力のレベル表

詳細:「ビジネスにおけるCEFRの活用」https://progos.ai/cefr.html

会社独自の英語力CAN-DOの薦め

さらに踏み込んだやり方として、企業が社内で必要な英語力の分析をきっちり行って、会社独自のCAN-DOを作成するという方法があります。会社で身に着けてほしい最低限のコアな英語力と、場面別、領域別に必要になってくるハイレベルな英語力といったものをCAN-DOにしておくのです。実現に向けたロードマップ的なものですから、「こんな英語力が身につつけば、仕事で〇〇や△△も手がけることができる」といった具体例を見せていけます。やるべきことが社員もはっきりわかって、自律学習をより一層後押しできるようになるからです。

4.英語スピーキングテスト「PROGOS」の特徴

さて、英語スピーキングテスト「PROGOS」(※1)をビジネスの場面に導入するメリットについて考えてみましょう。大抵の日本人の英語力は大学卒業してもCEFRAレベルです。特に発信能力が弱いです。A2くらいだと基礎的な会話、海外旅行がほぼ英語で基本的な用足しができるレベルですが、ここまで達していない人もたくさんいます。

 

B1, B2になるとまとまった英語を話せる力がつき、論理的に議論ができ効果的なプレゼンをする基礎が身についてきます。Cレベルは専門的・技術的な説明や議論ができ、いろいろな課題があっても解決できる高度な問題解決能力・交渉力が身につきます。その意味で、Cレベルはネイティブと互角に仕事でやりあえるレベルです。実は日本人はこのAレベルからBレベルの階段を上る部分が最も難しいです。俗にいう「中級の壁」と言われる部分で、英語のハウツー本は常に初級や入門書ばかりがベストセラーになるので有名です。

 

英語スピーキングテスト「PROGOS 」はこのA1からB2までのステップを特に重視し、その部分のスピーキング力の診断を的確にすることを目標にしています。

 

さらに学習効果を高めるためには、テストとレッスンの連動が大切です。この連動という点では、PROGOS には スマートメソッドというレアジョブの学習プログラムがA2からB2までステップごとにあって、レベルアップを実感できるような仕組みになっています。

 

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※1 英語スピーキングテスト「PROGOS」について

 

■無料トライアルのご案内

5名様まで無料トライアルを受験いただけます。ぜひお試しください。

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■サービスご案内資料

詳細資料をご希望の方は下記よりダウンロードくださいませ。

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人事評価基準をTOEIC®LRからCEFR-Jへ変更!
グローバルIT企業の決断の理由に迫る

 

<登壇者>

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汾陽 祥太

HENNGE株式会社
執行役員・Englishnization Evangelist

 



201910月に東証マザースに上場したHENNGE株式会社は、B2BむけのSaaSセキュリティーサービスを販売しています。2014年に英語公用語化を決定し、3カ年計画を立て実行してきました。なぜ当社が英語公用語化に踏み切ったかというお話についてはレアジョブの以前の講演でお話したが、今回は当社が英語公用語化でどんな結果や効果が生まれたのかというお話をします。

英語公用語化の効果や結果

当社はIT企業ですが、雇用市場でITエンジニアの需要がものすごく高まっているため、人がなかなかとれなかったんです。けれども国外に目を向けると、やる気があって優秀なエンジニアが世界中にいることがわかりました。その方たちに何とか当社で働いてもらいたかったのですが、一番のネックは日本語でした。採用候補者の100%近くが、日本語はNGと言ってきました。そこで、採用する当社の側が社内公用語を英語にすることにしました。

 

英語公用語化に踏み切った結果、多種多様な国籍、文化、宗教がミックスする楽しい職場環境になっています。飲み会もジャパニーズスタイルの居酒屋に行くのがだんだん合わなくなってきました。宗教によっては食べられないものもあるので、最終的には社内で好きなものをケータリングで頼みビアバッシュのような形でパーティーを行う形になりました。

 

会社全体では外国籍は約20%、あとの80%は日本人です。部署によってその比率は変わり、例えば開発部門は3/5が外国籍です。社内では、言葉でのコミュニケーションは何語でもいいのですが、一人でも母国語が違う人がいたら英語を話すことをルールにしていますので、開発部門はすべて英語で言葉が飛び交っています。

 

TOEIC®L&Rはたくさん使いました。このテストはいいところがたくさんあって、初心者にはよい指標で、学習者がどれくらい時間を使ったかが結果に表れ、やればやっただけ結果がでますし、合格不合格がありません。公開テストは年間10回以上やっていますし、IPテストでは会社内でできます。数千円なのでTOEFLIELTSより安価です。全社平均点は2014年に495点だったのですが、2021年には781点となり、全社的には800点を目指すことになっています。

 

2019年度から査定評価にTOEICを取り入れることを始めました。マネジャーには800点、リーダーには650点などのように作っていきました。元からそのポジションにいてTOEICスコアが足りない人はポジションが下がることはありませんが、上にあがるときは取得しなければいけないことにしました。

 

TOEICを査定に組み入れてわかったことですが、いくつかあります。まず、英語ができるようになるという本来の目的よりも、ともかくTOEICのスコアを上げることに偏り, TOEIC, TOEICばかりをいうようになってしまったんです。次の課題として、もともといるマネジャーと英語ができる新卒のコンフリクトが生まれました。またTOEICに対してこんな声も社内できこえてきました。

 

「英語ができる人が偉いんですか?」

「TOEICスコアが足りないために採用ができないのは機会損失じゃないですか?」

「実際の仕事では英語を使わないじゃないですか?」

「ふだんは使えても、テストだとなぜか点数がとれないんです。」

「TOEICスコアが高かった人が、仕事で全然つかえなかった。」

 

一方、外国籍のメンバーからは「TOEICを使っているのはおかしくない?」という意見がでました。TOEICスコアが足りなくてもちゃんと仕事ができている人がいるという意見もでました。インドネシアなどの非英語圏の外国籍の人は、テスト勉強を一切せずに受けて990点が続出、すべて950点以上でした。外国籍で英語を使う人から見ると900点以下は赤ちゃんのレベルで900点はスタート地点であり、それからが勉強というのです。

 

そこで、なぜ英語を公用語にしたのかと考え直し始めました。そもそもは優秀な外国人のエンジニアを雇い、継続的に働いてもらうためだったのですが、社内の英語力のギャップにより、コミュニケーションが断絶してしまっている状況がわかりました。例えば営業・SE現場と開発現場の間です。

 

そこで英語公用語化の定義を見直し。社内のメンバー同志が円滑なコミュニケーションが取れるようにとしました。業務に必要最低限なコミュニケーションだけではなく、様々な日常的なコミュニケーションからも問題点や、サービスに対しての気付きなどが生まれると考えており、そういった意味でのコミュニケーションが必須だと考えました。

 

そのころに出会ったのが投野先生が薦めているCEFR-Jでした。英語の4技能を、CAN-DOで何ができるのか、どのレベルでできるのかを定めています。またCEFR準拠以外の他テストとの対比表があるので、TOEIC, TOEFL、英検、ケンブリッジ英検でもどのレベルを使ったらよいかがわかるので、これらの結果をCEFR-Jに置き換えようとしています。

 

CEFR-Jにしたのは、CEFRでのボリュームゾーンがB1・B2のなかで、同じレベル内でも業務でできることに結構差があったからです。

 

とはいえ、B1.1にたどり着くまではTOEICを引き続き利用しています。というのは600点強までは、問題理解のための基礎リスニング力がなければ、スピーキング力は問えないと思うからです。

 

費用面と時間ではTOEIC L&RTOEIC S&Wが受けやすく、受けることが多いのですが、今回PROGOSにも期待していて、PROGOSも将来査定の仕様にいれることなどを期待しています。

 

またスペシャルインセンティブとしてC1をとると年収が50万円アップするという制度を設けています。C1だと外資系企業でマネージャーとして、また国際人としてバリバリ働けるレベルです。社内で上のほうの人たちはこれを目指して頑張っています。

 

スピーキング力でCEFRを取り入れることに、現場からはハードルがあがったという声もありましたが、やはりTOEIC800点、900点とっていても意見が言えない、カンバゼーションの英語が聞き取れない人がいるのがいるのも事実です。

 

査定は、CAN-DOでおこなうべきか、テストの結果証明書でおこなうべきかの議論はでていますが、やはりCAN-DOでおこなうべきではないかと思います。昇格会議ではプレゼンをして評価していきますが、英語でも同じことをやる必要があると思います。投野先生にもご協力をいただき、会社独自のCEFR-HENNGEを作って査定に使おうと考えています。


Q&A

<質問>

英語以外ではどんなスキルがグローバル人材には必要でしょうか?

 

<回答>

異文化・多様性の中で働ける力だと思います。カルチャーマップの著者であるエリン・メイヤーにも当社に来てもらって講演してもらいました。英語はあくまでもツールであり、会社が社員に求める人材像は、チャレンジ、自律、論理性などを兼ね備えた人物だと思います。

 

最後に

いかがでしたでしょうか。

今回のセミナーでは、CEFRについて、社内でのCEFR活用事例やCEFR/CEFR-J準拠テストと他テストの違いを伝えさせていただきました。

 

TOEIC®L&Rは「情報収集」する上で必要な能力を測定できるテストです。しかしミーティングで発言する能力、プレゼンする能力、海外クライアントと交渉する能力など「アウトプット」の能力測定については少し物足りな移転もあるのではないでしょうか。

 

本レポートが皆さまの会社における実践的な英語力育成に向けて、英語評価基準の見直し、またCEFR活用のイメージをお持ちいただけましたら幸いです。

 

株式会社プロゴスでは定期的にグローバル人材育成に関するセミナーを開催しておりますので

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